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主力選手に故障が相次ぐヤンキース。
チームの命運は、黒田とイチローに!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/09/05 11:50
黒田博樹とイチロー。8月19日のホームにレッドソックスを迎えた大一番では、2打席連続本塁打を放ち、黒田の12勝目を強力に後押ししたイチロー。ホームでの連戦では打率5割以上をマークするなど、好調が続く。
ゆるやかにではあるが、パニックが起きつつある。
ニューヨーク・ヤンキースのことだ。
ニューヨークのメディアはいいことも、悪いことも誇張する傾向が強いが、アメリカン・リーグ東地区の首位を走っているとはいえ、オリオールズ、レイズがゲーム差を徐々に詰めてきた。特に、いつかは勢いが止まるだろうと思われていたオリオールズがしぶとい。
メディアの間に「ヤンキースはこのまま逃げ切れるのか? 本当に大丈夫なのか?」という論調が目立ってきた。
気持ちはわかる。ヤンキースはシーズンを通して主力級の選手にケガが相次ぎ、よくぞここまで首位をキープできたと思うほどだ(その功労者は投手では黒田博樹、野手ではデレク・ジーターだ)。
殿堂入り候補が居並ぶ“そうそうたる”故障者リスト。
今季、ヤンキースの故障者リストに入った選手たちは、将来は殿堂入りが有力視されている選手が多い。
●マリアノ・リベラ
いわずと知れたメジャーを代表する、いや歴史に名を残すクローザー。今季限りでの引退が濃厚だっただけに、戦線離脱はなんとも残念。リベラは守護神であり、ブルペンの精神的な支柱でもある。彼の離脱でリリーフ陣の安定性が損なわれた。
●アレックス・ロドリゲス
7月24日、マリナーズのエース、フェリックス・ヘルナンデスから死球を受け左手を骨折したロドリゲス。9月3日に復帰して、4打数1安打はまずまずの結果。
かつての力はないとはいえ、やはり、中軸に「A-ROD」がいるかいないかでは威圧感がまったく違う。一カ月に及ぶ彼の不在は、それほどまでに深刻な得点力不足をもたらしていたのだ。
●マーク・テシェラ
A-RODがいない間、英語でいう「ラン・プロデューサー」になっていたのが一塁手のマーク・テシェラ。不調と言われながらも、81打点をマークしてチームを牽引した。しかし、左ふくらはぎを痛めて欠場中。
●ブレット・ガードナー
俊足で守備範囲の広いレフト、センター。ガードナーは7月に右ひじの手術を受け、今季は絶望となり、その穴を埋める人材としてヤンキースはイチローの獲得に踏み切った。