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主力選手に故障が相次ぐヤンキース。
チームの命運は、黒田とイチローに!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/09/05 11:50
黒田博樹とイチロー。8月19日のホームにレッドソックスを迎えた大一番では、2打席連続本塁打を放ち、黒田の12勝目を強力に後押ししたイチロー。ホームでの連戦では打率5割以上をマークするなど、好調が続く。
今後の登板機会は全勝がノルマ!? 実質エースの黒田。
ロドリゲスとテシェラの不在期間中、ヤンキースの得点力不足は顕著だった。ヤンキースといえば重量打線が売りだが、38歳を迎えて絶好調の1番ジーターがチャンスを作っても、ホームに返してくれる人材がいなかったのだから。
とりあえず、A-RODの復調が望まれるが、現有戦力で重要になってくるのが黒田とイチローのふたりの日本人選手だ。
特に先発投手陣のなかで安定度ナンバーワンの黒田に関しては、これから予想される7回ほどの登板は、すべて勝つことが要求される状況となるだろう。エースのCC・サバシアの肘の状態が完全ではないと見られるし、黒田の背中にかかる期待は大きい。
メジャーリーグでは、「6回自責点3点以内」がクオリティスタートの条件とされるが、現在のヤンキース打線、しかもどうしたわけか、黒田がマウンドに上がる時に限って援護が少ないという流れもあり、黒田に求められるものは「とにかく相手にリードを許さない」粘り強い投球になる。
イチローには上位打線に繋ぐ「チームプレー」が必須。
また、イチローについては8番、9番での起用が目立っているが、中軸で得点を作り出せない状況では、下位打線がチャンスの種をまき、ジーター、スウィッシャーの1、2番で得点をたたき出すパターンがもっとも効率的だ。
その意味でイチローが出塁し、なんらかの形で進塁することが極めて重要だ。最適の打順は8番、ヒットで出塁して9番で二塁に進み、ジーターを待つのが理想型だろう。ヤンキースに移籍してからは出塁率も上昇する傾向にあり、9月の重要な時期を迎えて四球を選ぶような「チームプレー」の評価がますます高まる。
イチローが9月に「化ける」ことが、ヤンキースにとっては本当に、本当に大切なのだ。