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岡田ジャパンの理想形は潰えたのか?
攻撃的SB内田篤人、22歳の正念場。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byToshiya Kondo

posted2010/06/04 10:30

岡田ジャパンの理想形は潰えたのか?攻撃的SB内田篤人、22歳の正念場。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

今年3月のバーレーン戦に出場した内田篤人。この時も本田圭佑の得点を演出している。岡田ジャパンが戦術的に非難されていた中にあっても、内田のプレーだけは認められていたのだが

周囲の過度なプレッシャーと岡田ジャパンの軌道修正。

 実のところ、W杯イヤーに突入した今年の初頭から、内田は“クールに試合を楽しむ”といった彼特有のポジティブな雰囲気を失っていた。「プレッシャー」という言葉を口にするようにもなっていた。

 しかし、それでも岡田監督が内田を使い続けてきたのには明確な狙いがあったからだ。内田の高速クロスが岡田ジャパンの有効な武器であることは、今も昔も変わりないからである。

 5月30日のイングランド戦。田中マルクス闘莉王の先制弾で活気を取り戻し、阿部勇樹のアンカー起用で前半のゲームをコントロールすることに成功した岡田ジャパンだが、果たしてこの守備的戦術でいいのだろうかという疑問の声は少なくない。

 むろん、時間帯によってはこのやり方もありだが、90分間押し通すのなら、この23人を選んだ意味がなくなるのではないか。

最近では再び積極的な言葉を語り始めていたのだが……。

「みんなが動いて崩すのが日本の長所。いい形は今までで出来ているので、本番でも僕が足を引っ張らなければサイドで連動して崩すこともできると思う。簡単じゃないけど、やれることは全部やろうと思うし、ワールドカップのために今までやってきた。本番のピッチに立ったとき、落ち着いていられるような準備をしたい」

 内田が今回のW杯への強い思いをはっきりと語ったのは、日本を出発する直前の国内最後の練習直後のことだった。普段、W杯に対する覚悟や意欲を積極的に前面に出すタイプではない彼が、ここまで言ったのは初めてだった。

コートジボワール戦でのプレーにスタメン復帰をかける!

 W杯前最後の親善マッチである6月4日のコートジボワール戦。

 岡田監督は代表メンバー全員を使いたいという意向を示し、国際Aマッチとして行われる90分間の後に、45分×1本の追加マッチを行う準備をしている。死のG組(ブラジル、ポルトガル、北朝鮮)を突破すべく、北朝鮮対策として日本と戦うコートジボワールのエリクソン監督も、そのプランに同意しているとのこと。内田にとっては5月12日のACL浦項戦以来3週間ぶりの実戦となる。

「僕はスピードが遅いわけじゃないから、ポジションを取っていれば大丈夫。ぶち抜かれることはない。ただアフリカの選手は独特のタイミングで飛び込んできたり、足が出てきたりする。そこは気をつけていかないと」

 アフリカ勢との対戦について、内田はこう話していた。今季プレミアリーグ得点王のドログバを、内田も含めた日本の守備陣がどのように抑えるのか? 6月14日のW杯初戦カメルーン戦を占う重要な試合になることは間違いない。

 岡田監督によって内田の目の前に世界への扉が開かれてから2年半。

 初の逆境に立たされている今こそ、苦しみに抗いながらもピッチに立ち続けた国際Aマッチ31試合の経験をすべてぶつけ、自ら這い上がるべきときだ。

 22歳となった背番号6の、正念場である。

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