後半には2度の決定機を演出したが……。

　それでも、眼を惹く場面はあった。後半7分、前を行くウェルベックに香川が縦パスを通し、ゴール前に迫った瞬間だ。エバートンのDFジャギエルカは、ボックスに侵入したウェルベックにタックルした。彼の足はボールに向わず、ウェルベックの足を襲った。ウェルベック転倒。8割がたPKの場面だったが、主審は笛を吹かなかった。

　2度目の見せ場は後半22分、バレンシアの右サイド突破からはじまった。バレンシアは、中央にクロスを送った。ゴール前が混戦になった。球を拾った香川は、GKハワードが飛び出したのを見て、すぐうしろにいたクレバリーに短いバックパスを送った。賢明な選択だったが、運が悪かった。クレバリーのシュートは、反射的に飛び込んできたジャギエルカの足に当たって跳ね返された。見事な守備といいたいところだが、あれは交通事故に近い。ユナイテッドは同点機を逸した。

眼を疑った、キャリックの急造センターバック。

　この日のユナイテッドは守備陣が不安定すぎた。無理もない。ジョニー・エバンス、クリス・スモーリング、リオ・ファーディナンド、フィル・ジョーンズといった本職のディフェンダーを、ことごとく故障で欠いていたからだ。CBに入ったのは、ビディッチとキャリックだった。え、キャリック？ 私は眼を疑った。MFに急造のCBはつとまらないでしょう。ましてエバートンの攻撃陣は空中戦に強い。FWのフェライニなどは194センチの長身だ。

　案の定、決勝点はフェライニのヘディングから生まれた。彼をマークしていたキャリックは、いくら飛び上がっても頭ひとつ低かった。ま、仕方がない。ファーガソン監督としては故障者の戦列復帰を待つしかないだろう。

　ユナイテッドの課題は、むしろ中盤のダイナミズムが足りないことだ。スコールズはさすがにやや衰えた。クレバリーには遠慮が目立つ。フレッチャーはまだしばらくお留守だ。場合によってはジョーンズをMFで使う奇手も用いられる可能性がある。

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