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八百長問題で大揺れの王者ユーベ、
コンテ監督の処分を巡り徹底抗戦。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/08/10 10:30
八百長問題に関して、検察側から1年3カ月の出場停止処分を求刑されたユベントスのアントニオ・コンテ監督。求刑前には「心配していない」と強気な言葉も口にしていたが、今は何を思うのか。
約445億円の損害賠償の請求で、反撃の狼煙を上げる。
アニェッリ会長は昨年夏、カルチョ・スキャンダルによって剥奪された2シーズン分のスクデットの返還を協会へ正式に要求したが、あえなく却下された。すると、続く11月に「優勝剥奪はCL出場権とTV放映権の損失、保有選手の市場価値下落を招き、クラブのブランドイメージ低下と大幅な売上減収を招いた」として、協会を相手取った損害賠償請求裁判の訴えを起こした。
前代未聞の請求額(4億4372万5200ユーロ=約445億円)には、さすがに世論からも「無謀だ」との声が噴出した。クリスマス前には関係者が一堂に会し、仲介の席が設けられるも歩み寄りは見られず。双方が法廷闘争で一歩も退かない姿勢を強調し、今も係争中だ。
昨季終了直後にも「テルツァ・ステッラ(3番目の星)論争」が起きている。'05年と'06年の優勝剥奪を頑として受け入れないユベントス側は、昨季の無敗スクデットを30回目のリーグ制覇だと独自にカウント。今季の新ユニフォームへ、優勝10回を意味する金色の星を3つ刺繍する権利を得た、と主張した。これには、協会のみならずミラノ勢などの猛反発もあり、結局妥協案として「グラウンドでの優勝30回」を意味する“30 SUL CAMPO”の刺繍を入れることで手を打った。
クラブは、積極的な選手補強でコンテ監督をバックアップ。
懲罰委員会(=協会)との全面対決を宣言した翌日、アニェッリ会長は、あらためて「何があろうとわれわれの監督はコンテしかいない」と完全バックアップを強調。ビノーボ練習場にも電撃訪問し、選手たちへ「グラウンド外のことは気にするな。プレーに集中しろ」と発破をかけた。
今夏、クラブは法廷闘争に勤しむ一方で、補強市場でも積極的に動いた。CLとリーグ戦の両立には中盤の底上げが不可欠。ウディネーゼからイスラとアサモアのMFコンビを引き抜いて、左右サイドの機動力は一層厚みを増した。昨季15ゴールの活躍が認められ古巣へ復帰したFWジョビンコは、デル・ピエーロの後継者としての期待も高い。さらに、ファンペルシ(アーセナル)級のビッグネームFWの獲得も諦めておらず、国内連覇とCL上位進出に向け、ユベントスに歩みを止める気はない。