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ロンドンで輝くU-23代表の陰で、
“落選組”大迫、原口らが見せる意地。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/08/03 10:31
チームの中心であり続けながら、最後の最後にロンドン切符を手に入れられなかった大迫。エリート街道を歩いた彼は、最初の挫折を糧にすることができるか。
「ここ」ではない場所で戦う仲間に向けた大迫のエール。
以前、権田が言っていた。
「大迫は何よりまず、自分を責めるタイプなんで。『オレが決めてれば』って考えるところがFWらしい。もちろんそんなことを考える必要はないんですけど、僕はそれが、アイツのいいところだと思うので」
確かに敗戦後の大迫は、ミックスゾーンではいつもうつむき加減で必要以上に言葉を発しない。質問の答えはひとこと、多くても二言三言。しばらく沈黙が続くと「いいですか?」と確認してバスに乗り込む。そんなことも少なくない。しかし、それが悔しさを消化して力に変える彼のスタイルなのだろう。
「僕はここで頑張るしかない」
広島戦後のミックスゾーンで発せられた大迫の言葉は、「ここ」ではない場所で戦っている仲間に向けた、素直じゃない自分なりのエールにも聞こえた。
浦和の原口元気にはアピールの場が与えられず……。
原口元気も同様に、ロンドン五輪に懸ける思いは人一倍強かった。
アジア最終予選では招集メンバーの当落線上を行き来しながら、一方でA代表に招集されることもある。しかし、選手人生では基本的に一度しか巡って来ない五輪出場のチャンスは、世界に名を売るためにも重要な位置付けにあった。だから今年2月、アウェーのマレーシア戦に臨むメンバーに名を連ねた時の覚悟は相当のものだった。
「ケガ人が出て巡って来たチャンスだったので、これを逃したら次のチャンスはないと思っていました。あの試合で結果を残せたことで、個人的に強くなれたと思います。自分に思い切りプレッシャーを掛けていたし、正直、かなりの不安もあったので。そういう状況で結果を残せたことが、僕にとっては大きい。一回り大きくなれたって思えました」
チームとしてはアジア予選最大のピンチ、自身にとっては最大のチャンスだったマレーシア戦について、原口はそう振り返る。
「欲しいものがあったら、何が何でも取る。うまくなりたかったら、誰よりも努力してうまくなる。それが当たり前というか、そういう性格なので負けるのは嫌ですね。絶対に」
そんな思いとは裏腹に、今シーズンはペトロヴィッチ監督率いる新チームで出場機会が減少した。A代表の合宿には招集されたがW杯最終予選のメンバーからは外れ、同時にU-23代表が参加したトゥーロン国際大会への参加も叶わなかった。努力に報いるアピールの場は、残念ながら与えられなかった。