リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
開幕1カ月前なのに話題性が低い!?
リーガの移籍が盛り上がらない理由。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2012/07/28 08:01
バレンシアからバルサに移籍したジョルディ・アルバ。EURO2012では全試合フル出場。ロンドン五輪代表メンバーにも選出。
移籍の話題が盛り上がりを欠いている。
どのチームもしっかり強化を進めてはいるのだが、獲得した選手の大半は移籍金ゼロだったり、他クラブからの期限付き借り受けだったりで、大きな数字が取り沙汰されないからだろう。
ここ数年、リーガの多くのクラブは不況を気にかけることなく補強に大金を費やしてきた。9チームが胸スポンサーなしで開幕を迎えることになった昨年でさえ、リーガ全体の出費は前年比37%増を記録した。そうしてスタジアムを安息の場所とするファンに応えていた。
ところが今年の夏は様子が違う。
2012-2013シーズンの第1節まで1カ月を切ったところで、新戦力獲得に1ユーロも使っていないクラブが9つもある。動いたお金の最高額はバルセロナがバレンシアからジョルディ・アルバを買ったときの1400万ユーロ(約14億円)であって、あくまで現時点の話ではあるが、アトレティコ・マドリーがファルカオ獲得のために払った昨年の最高額4000万ユーロ(当時のレートで約44億円)の半分にも満たない。
移籍市場が低調な原因はスペインの経済危機にあり。
原因は、つまるところ、世界に大きな影響を及ぼすまでに深刻化したスペインの経済危機だ。
レアル・マドリーとバルサを除くクラブは大口のスポンサーを見つけられず、マーチャンダイジングの売り上げにも希望は持てず、増収の見込みが立たない。国民の4人に1人(25歳以下は2人に1人)が失業しているときにシーズンシートの料金を上げるわけにもいかない。
なのに付加価値税率(日本の消費税率)と個人所得税率は上げられた。前者は18%から21%に、後者は1部でプレイする選手の9割以上が対象となる「年収30万ユーロ(約3000万円)以上」の場合、昨年と較べて7%アップした。個人所得税は本来は選手が払うものだが、「手取り額」での年俸交渉が通例となっているので、負担するのは結局クラブである。
そこで移籍金がカットの対象になったわけだ。払う額が少なければ税金の額も下がるし、そもそも買い取らなければ払うこともない。だからまず移籍金ゼロで行け。ダメならできるだけ安い選手を探せ――。