リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
開幕1カ月前なのに話題性が低い!?
リーガの移籍が盛り上がらない理由。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2012/07/28 08:01
バレンシアからバルサに移籍したジョルディ・アルバ。EURO2012では全試合フル出場。ロンドン五輪代表メンバーにも選出。
資金を使えないからこそ、将来有望な10代の抜擢を。
こんなぱっとしない状況に置かれているリーガだが、だからこそ期待できることがひとつある。
カンテラにいる10代の若手の抜擢である。
先日、スペインのU-19代表はA代表同様、欧州選手権で2連覇を達成した。決勝進出は3年連続、優勝は'02年以降6回目なのでニュースに新鮮味はなかったけれど、選手育成は順調であり、10代にタレントがいることは確認できた。彼らを継続的に使うチームがでてきたら、新シーズンは見所がぐっと増える。
ちなみに、スペインのこの世代の強さの秘密に、年少であっても能力のある者はかまわず使うという伝統がある。
'04年のユーロでA代表を率いたイニャキ・サエスがU-21代表監督に就任した'96年、「そうすることで成長が早まり、その後の大会で役立つ経験をどんどん積んでいくから」という理由で始めたことであり、現U-19代表監督ロペテギは「直ちにパフォーマンスを上げることを求めるのではなく、選手の才能と未来を信じているから」ともいう。
カンテラの育成に注力したバルサの成功に倣うクラブも。
中期的視点が必要な考え方だが、もちろんクラブでも有効で、実際、現在オリンピック代表に呼ばれているイスコは昨年バレンシアBからマラガに移って大きく伸びた。イジャラメンディはレアル・ソシエダのBからトップチームに上げられ、継続的に起用され、頭角を現した。オリオル・ロメウはバルサBからチェルシーに移り、異国のサッカーと文化に揉まれ、成長した。
先のU-19代表のメンバーではセビージャのカンパーニャやセルタのホナタン・カストロ“ジョニ”、バレンシアのアルカセル、アトレティコのサウールあたりにチャンスが廻ってくるかもしれないので、楽しみにしたい。
ところで、不況の他バルサの成功もあって、カンテラ政策を見直しているクラブは幾つかある。そのうちエスパニョール、レアル、レバンテ、ラシンは財政的な理由で2部Bリーグから除外されたクラブの枠を買い取り、それぞれのBチームやCチームのレベルアップを目論んでいる。
すぐには立ち直らないであろうスペイン経済のせいで、レアルとバルサを除くクラブの大物獲得はしばらくなさそうだが、一方で“国産”のスターは増えていくかもしれない。