ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
関塚ジャパンが、完璧な作戦勝ち!
「スペインに勝ったのは奇跡じゃない」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2012/07/27 11:35
大津の先制ゴールで歓喜に沸く選手たち。「自分たちの色をもっと出せるし、もっともっと激しくいける。(ピッチ上で戦う)11人だけじゃなく、18人全員で頑張って、1次リーグ突破を決めたい」と試合後に語ったキャプテンの吉田。
大津の先制点で、より一層カウンターの意識が徹底した。
「日本は悪くない流れでしたけど、早く先制点がほしいと思っていました。そんな時、大津君のゴールが決まったので、時間的にも非常に良かったと思います」
東は試合後、そう証言している。
前半34分、扇原のCKから絶好のタイミングで生まれたのが大津祐樹のゴールだった。これは、日本にとって非常に価値のあるものだった。
「大津君のゴールで、その後、自分たちがどう戦うのかがよりハッキリできましたからね。しっかり守って、カウンターで追加点を取る。そのことに、より徹することができたので、あのゴールは本当に大きかった」
スペインの支配率が65%にも達したのに、シュートはわずか6本!?
実際に大津のゴール以降、日本の選手たちには戦術に対する迷いが一切見られなかった。
相手にボールを回されても慌てず、しっかりと自陣に戻って守備の網を張る。それがオートマティックに出来ていた。
スペインがボール支配率で65%にも達していたにもかかわらず、シュート数が前後半合わせて6本に終わったというのは、シュートを打たせない日本の守備が機能していたことの裏返しだ。
また、局面局面でも日本の選手は気持ちを見せて戦っていた。左サイドバックのアルバとマタが流れてくることが多かった日本の右サイドは、酒井宏樹が身体を張った守備でほとんどチャンスを作らせなかった。
“絶対に見返してやる!”という悔しさが、全員を逞しく成長させた。
攻撃面では、永井が非常に効いていた。
カウンターからチャンスになる時はもちろん、ならない時も明らかに永井は相手の脅威になっていた。
それは、前半41分にセンターバックのイニゴ・マルティネスをピッチ外に追いやったことからも見て取れる。その後も永井は、カウンターでダッシュを繰り返し、グラスゴーの観客を沸かせた。
「絶対に勝ち切って終わりたかったんで、一生懸命走りました。下馬評では、負けると思われていたんで」
永井は笑顔でそう語っていたが、彼のこの言葉に、全選手の思いが込められているのではないだろうか。本大会に入るまで、ベラルーシ戦、メキシコ戦に勝ちながらもなかなか評価されず、なでしこの影に隠れてその期待感は薄かった。それゆえ選手たちは、“絶対に見返してやる!”と思っていたのだという。
その強い思いと戦術が合致した時……彼らは大きな成果を手にした。