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セリエAに現れた“超攻撃サッカー”!
20年ぶり昇格のペスカーラへの期待。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/07/12 10:30
ズデネク・ゼーマン監督に率いられ、セリエBで優勝したペスカーラ。昇格した今シーズンはジョバンニ・ストロッパ新監督が指揮を執る。
勝敗は二の次で、90分間攻め続けてこそペスカーラ!!
今は監督稼業から足を洗ったガレオーネは、
「上(のカテゴリー)から下まで、毎年何十というチームが降格するんだ。今さら、一風変わったチームが一つ落ちたところで何の問題があるわけじゃない。当時は思い切ってやれたものだよ」
と、戦後育ちらしく豪胆に話す。
“勝敗は二の次でも、90分間攻め続けるチームこそペスカーラ”とは、現在に至るまでクラブと町のフィロソフィーとなった。
昨季ももちろん昇格という最高の結果は出したが、偏屈な人物として知られるゼーマンが、ペスカーラで熱狂的に支持された理由は、この土地柄にある。
残念なことに、昇格を成し遂げたゼーマンが古巣ローマの新監督に引き抜かれたため、ペスカーラはFCスッドティロル(3部)のジョバンニ・ストロッパ監督に急遽白羽の矢を立てた。
彼にはミランでの現役時代にトヨタカップ2連覇の実績があるものの、トップチームの指導経験はわずか2年目。
先行き不透明ながら一つだけはっきりしているのは、ガレオーネとゼーマンが用いた「4-3-3」と攻撃サッカーの精神を継承しなければ、町の人びとから総スカンを食うだろうということだ。
パスタで有名な企業「ディチェコ」の支援で再建を目指す。
財政基盤の弱い地方クラブの例に漏れず、ペスカーラも3年前に一度破産している。何らかの形で結果を出さなければ、プロの世界で生き残っていくのは困難だ。
パスタやオリーブオイルで知られる地場企業『De Cecco』の支援によって再建を担う新経営陣は、生き残りをかけて育成組織の充実を図った。
そこから巣立つ金の卵たちが、文字通りクラブの明日を支えているのだ。