スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
最強チームの弟分はやはり最強?
スペイン五輪代表を解剖する。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/07/13 10:30
五輪代表期待のアタッカー、ムニアイン(右)。EL、国王杯で決勝に進出するなど欧州に衝撃を与えた新生ビルバオの象徴だ。
スペイン代表が史上初のEURO2連覇を成し遂げた2日後、マドリー郊外のラス・ロサスにあるスペインサッカー協会本部にて、ロンドン五輪へ向けたU-23スペイン代表候補22人が発表された。
残念だったのは、個人的に非常に楽しみにしていたセルヒオ・カナーレスとチアゴ・アルカンタラの欠場だ。共にゴールに直結する決定的なプレーができるアタッカーなだけに、2人の離脱は他国なら致命的な戦力ダウンとなっていただろう。しかし、若い才能が溢れるように湧き出てくる現在のスペインに限ってはそこまでの影響がない。
2人の欠場に加え、バルセロナと代表でフル稼働し続けるセルヒオ・ブスケッツの招集が見送られたにもかかわらず、選ばれた22人はそのほとんどがヨーロッパのトップリーグで活躍する精鋭揃いとなった。
とはいえ、まだまだ日本では馴染みの薄い選手も多い。ゆえに今回は、「ラ・ロハ(フル代表の愛称)」と同じボールポゼッションをベースとしたテクニカルな攻撃サッカーを実践する「ラ・ロヒータ(ユース代表の愛称)」の面々を、分かりやすくフル代表の先輩達と比較しながら紹介していきたい。
安定感と貫禄が増してきた守護神デヘアがゴールを堅持。
まず守護神のダビド・デヘア。彼は2010年に当時19歳でフル代表のW杯候補メンバーに選ばれるなど、早くからイケル・カシージャスの後継者として期待されてきた同世代最高のGKだ。
地元アトレティコ・マドリーからマンチェスター・ユナイテッドへ引き抜かれた昨季は、シーズン序盤こそピッチ内外で若さゆえの不安定なプレーが目立った――店内でドーナツを食した後に駐車場へ財布を取りに行ったところ、万引き疑惑で逮捕されたなんて事件もあった――。だが今ではビッグクラブの正GKとしての貫禄もつき、人気スペイン人歌手のエドゥルネと交際するなど、フル代表の先輩を目指して公私共に右肩上がりの成長を続けている。