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セリエAに現れた“超攻撃サッカー”!
20年ぶり昇格のペスカーラへの期待。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/07/12 10:30
ズデネク・ゼーマン監督に率いられ、セリエBで優勝したペスカーラ。昇格した今シーズンはジョバンニ・ストロッパ新監督が指揮を執る。
大敗に終わったEUROの決勝戦も喉元過ぎれば、イタリアの話題は山だ、海だ、とバカンス一色になった。
だが、半島を囲む三海のうち東岸のアドリア海に臨む町ペスカーラの人びとは、もう8月の終わりを待ちきれない。20年ぶりのセリエA開幕が控えているからだ。
昨季のセリエBを制したペスカーラは、カテゴリーを超えた怒涛の破壊力を見せ付けた。名将ズデネク・ゼーマンが率いたチームは、有機的にポジションチェンジをくり返す3トップに、“レジスタ”と呼ばれる司令塔が間断なく縦への速攻を仕掛け、両ウイングハーフと両サイドバックが交互に駆け上がった。
まさに“フィールドプレイヤー10人による全員攻撃”と言いたくなるような連続アタックは、リーグトップとなる42試合90得点を積み重ねた(※得点ランク2位のレッジーナは63点)。
本拠地「スタディオ・アドリアティコ」のホームゲームでは、ペスカーラの人たちは「これこそわが町のチームだ!」と愉楽の90分間を味わっていた。
だが、攻撃的サッカーを信条とするペスカーラが、セリエAで戦ったのはこれまでにわずか5シーズンしかない。
彼らはなぜセリエAに定着しなかったのか。
ひたすらゴールを狙う“シャンパン・サッカー”に酔う。
小気味よいパスがピッチのあちこちで弾ける派手な“シャンパン・サッカー”をイタリアへ本格的に持ち込んだのは、名将ガレオーネだといわれている。
1986年から2000年にかけて、通算5季にわたって彼に率いられたペスカーラは、勝とうが負けようが、とにかく相手ゴールを狙い続けた。
イタリアでそんなチームは前代未聞だったが、結果度外視ともいえる享楽的なサッカー観に人びとは魅了された。