杉山茂樹のサッカー道場BACK NUMBER
サイド対策が無かった代表選手発表。
“専守防衛”の日本に勝ち目はない!!
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byAFLO
posted2010/05/13 10:30
岡田武史監督によって代表メンバー23人が淡々と読み上げられた
歓声が沸いたのは、第3GK川口能活の名前が読み上げられたときぐらい。南アW杯に臨む日本代表は、概ね予想通りのメンバーに落ち着いた。
そこに浮かび上がるのは、岡田サンの従来を肯定する姿勢だ。これまでと同じような戦い方で本番に臨もうとしていることが、メンバー発表から明らかになった。
岡田サンへの不支持率は、目下9割弱。巷に渦巻いている不平不満を拭い去るためには、メンバー発表でこれまでとは違う何かを見せる必要があった。これまでとは少々異なる狙いを、選ぶ選手の顔ぶれで示すことが求められていた。
だが、発表されたメンバーは従来通り。これでは盛り上がりたくても盛り上がれない。期待感は抱きにくい。仰々しく行なわれたメンバー発表記者会見が、とても空しい催しに見えた。
親善試合と同じ布陣でW杯大会を戦うつもりの岡田ジャパン。
アジア予選は楽勝。平素の親善試合も、その9割はホーム戦。来日チームの大半は2軍、3軍のメンバーを送り込んでくる。したがって、戦績は43戦して7敗と、すこぶる優秀だ。
にもかかわらず、本番ではグループリーグで最下位候補に推されている。無数に存在すると言っても過言ではないブックメーカー各社のなかで、日本を3位以上に推すものはない。揺るぎない泡沫候補と目されている。
日本の立ち位置は、平素と本番で180度異なるわけだ。
マイペースで試合ができる平素に対し、本番は相手ペース。ボールをいかに保持するかが問われる平素に対し、本番は相手ボールをいかに奪うかがまず問われる。サッカーゲームの進め方も、必然、変更を余儀なくされる。「作る」より「奪う」が前提になる。高い位置で「奪う」ことができれば「作る」必要はない。
発表されたメンバーリストをそうした視点で眺めると、問題ありと言いたくなるのだ。
「相手にかかわらず、いつもの自分たちのサッカーをするだけです」と言っているように聞こえる。
最も重要なサイドバックをなぜ3人しか選ばないのか?
サッカーは相手と対峙するスポーツだ。相手に応じて戦い方を変えるのが常道。「いつもの自分たちのサッカーをするだけです」は強者の姿勢。弱者には工夫が求められる。
発表された23人のメンバーからはそれが見えてこない。岡田サンは、発想を転換することなく、強者のつもりで本番に臨もうとしている。弱者の構えが見えない。僕はそう思う。
「できるだけボールを高い位置で奪って……」と岡田サンは言うが、相手のサイド攻撃に対する策は見えない。最も重労働を強いられそうなサイドバックをなぜ3人しか選ばなかったのか。