MLB東奔西走BACK NUMBER
控え選手から主力打者へと前進中!
ブルワーズ青木宣親の“日々是勝負”。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/06/09 08:02
5月18日のツインズ戦で、フライを背走しながらフェンス手前で捕球してみせた青木宣親。このプレーを地元メディアはウィリー・メイズ氏が、かつてワールドシリーズで見せたプレー“ザ・キャッチ”の再現だと絶賛した。
ここ最近のメジャーリーグでの、日本人野手に対する低評価をまざまざと思い知らされたのは、今年のストーブリーグでのことだ。
それは、日本人選手のメジャー挑戦が始まった頃の野茂英雄氏らと同じ。年俸や待遇などの低評価を一切気にせず、とりあえずはメジャーの世界に飛び込む。そして、そこから自らの力で逆境を切り開いていくという“ゼロからのスタート”が求められる時期に来たということだ。
そのゼロからのスタートを受け入れた1人が、ブルワーズ入りした青木宣親選手だ。
ポスティング制度を利用してメジャー入りを目指し、ブルワーズとの独占交渉権を得たまでは良かった。だが、青木を必要として入札したはずのブルワーズは、彼に関する十分なデータを持っていないということで、改めて首脳陣の前でプレーを披露するという、テストまがいのことまでやらされる羽目になった。
これは、NPBで年間200安打を2度も達成したという実績を、まるで評価基準と考えていなかったということの表われなのだろう。しかも、無事契約できたものの年俸はヤクルト時代を下回り、あくまで控え選手としてしか見なされていなかった。
控え選手から主要打者へと変わった、首脳陣の評価。
だがシーズン開幕から2カ月が経過し、首脳陣の青木に対する評価は間違いなく変わった。
ここ最近の先発出場数が激増している通り、今やロン・レネキー監督にとって、欠くことのできない戦力になっていると断言できる。それは青木が今シーズン初めて3安打を記録した5月17日アストロズ戦後の監督の発言からも見てとれる。
「左投手(この日先発が左投手だった)に対し、青木を起用するのには満足している。今後も左先発に対し出場機会が増えていくだろう。ただし、もうすぐ負傷したゴメスが復帰する。青木を入れて中堅手が3人になるので、今後の起用法は何ともいえない。だが今は打線がまったく機能していない。打てる選手を使っていくことになるだろう」
この当時のレネキー監督の考えは、左投手を苦手としているモーガン選手に代わっての青木の先発起用であり、あくまで青木は中堅手の1人として併用していく存在でしかなかった。
だが、状況は数日後に一変した。
5月21日以降、レネキー監督は青木をほぼ毎試合先発起用するようになったのだ。しかも、ゴメスが復帰してからは右翼だったハート選手を一塁手に回してまで、青木の先発出場に固執している。それだけ青木の打撃に信頼を寄せているということになるだろう。