プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンUの2列目に史上最高額で参戦!
マタは“衝動買い”ではなく“福袋”?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2014/01/28 10:45
マンチェスターでメディカルチェックを受ける際に早速、地元ファンに囲まれる。不振のチームを変える存在として期待も高まる。
1月25日、マンチェスター・ユナイテッドのフアン・マタ獲得が決まった。
プレミアリーグでは、マタがベンチに座り続けたチェルシーに敗れて今季7敗目を喫し、リーグカップ準決勝第2レグでは、PK戦でサンダーランドに決勝進出を阻まれた直後の出来事だった。
移籍金は推定3700万ポンド(約63億円)。これはマンU史上、過去最高の金額だ。デイビッド・モイーズ体制初の大物獲得は、巷で主要タイトル獲得がほぼ絶望的になった新監督の「パニック補強」と言われ、国内数紙では「屋根から先に家を建てようとしている」として、疑問の目を向けられてしまった。
たしかに、プレーメイカーの獲得はチーム立て直しの最優先課題ではなかった。なぜならモイーズは、正トップ下のウェイン・ルーニーを筆頭に、アドナン・ヤヌセイ、アントニオ・バレンシア、香川真司、アシュリー・ヤング、ナニといった2列目要員を既に多数抱えている。最重要課題は、昨夏の時点から守備面の梃入れである。
チェルシー戦にしても、ボランチ起用されたDFのフィル・ジョーンズがあっさりかわされて先制を許し、左SBのパトリス・エブラが相手選手もスペースもカバーできずに追加点を奪われ、CBのジョニー・エバンスが敵を逃がして止めを刺された。
ファンペルシ、ルーニーを欠くと迫力が失われる前線。
但し、続くサンダーランド戦でもそうであったように、エースのロビン・ファンペルシとルーニーを怪我で欠いたマンUには、前線の創造力と迫力の不足が顕著だったことも事実だ。その点マタは、昨季のプレミアでルーニーと同じ12得点を上げ、ルーニーを凌ぐ12アシストをこなしているトップクラスだ。
今季のチェルシーでは、2列目に突破力と守備力の双方を求めるジョゼ・モウリーニョ監督の下で控えに回ったが、買える時にプレミア随一の実績を持つ実力者を買っておいて損はない。しかも、チェルシーが今季のマンUをライバルと見なしていない証拠とはいえ、国内の強豪から一線級を引き抜ける機会など滅多にあるものではない。格下扱いの屈辱は、今後の戦績アップで晴らせばよいのだ。