プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア今季最大のサプライズ!
“スワンゼロナ”快進撃の秘密。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/04/27 10:30
中位以下のクラブから着実に勝ち点を重ねるのはもちろん、マンCやアーセナルから大金星を勝ち取るなど上位陣との対戦成績も優秀。まさに台風の目となった。
選手、スタッフ一丸で戦うチームをファンが後押し。
もちろん、ファンは完全支援の姿勢を示している。
ホームでのアーセナル戦(3-2)で、早々の失点後に「2-1で勝つぞ!」と気勢を上げ、1度目の逆転を帳消しにされても「3-2で勝ってみせる!」と歌った声援が、プレミアのパスサッカー御本家からの勝利に一役買ったように。マンC、トッテナム、チェルシーなどからもポイントを奪ったリバティー・スタジアムでの強さの裏には、地元サポーターによる後押しがある。
だからこそロジャーズは、3月後半からの4連敗を公の場でファンに詫びた。チームも、続く4月14日のホームゲームでブラックバーンに完勝(3-0)。見事な立ち直りで、連敗脱出と同時に、プレミア残留をほぼ確定させた。
対戦相手のブラックバーンは、開幕前にはスワンジーと並んで降格候補と目されていたチームだ。しかし、試合中は相手に反撃の隙を与えず、試合後には控え選手とチームスタッフを含む全員が円陣を組んで団結心を示したスワンジーに対して、ファンによる監督更迭要求と主力選手の移籍志願が絶えず、ボトム3に低迷するブラックバーンは別物になっていた。
強豪チームがロジャーズ監督の引き抜きを画策!?
強豪によるロジャーズ引き抜きの噂は当然だろう。
レドナップの代表監督就任が予想されるトッテナムの他、マンC、チェルシー、リバプールも転職先候補と見られている。もっとも本人は、「CLを戦いたい」と意欲を見せる一方で、「キャリアを築く段階で、蓄積を台無しにする気はない」として、チェルシー後任の噂を否定したように、出世を急いてはいない。
たしかに、スタイリッシュな今季のプレミア残留は、昨季の昇格に勝るとも劣らぬ偉業だと言える。だが、来季は更なる試練がスワンジーを待ち受けている。
主力選手には、今夏の移籍市場で格上の触手が伸びるだろう。例えば、今冬のレンタル移籍後、トップ下に定着したギルフィ・シグルドソンは、ホッフェンハイムからの買取りをニューカッスルと競ることになりそうだ。資金力の低いクラブが、評価を上げた主力の流出を防ぎつつ、同等以上の即戦力を獲得してプレミア定着を果たすことは難しい。
見事実現の暁には、“スワンゼロナ”ではなく、スワンジーというクラブ名そのものが、プレミアにおけるパスサッカーの代名詞として認識されても不思議ではない。
その時こそ、ロジャーズは英国産の「選ばれし者」として、堂々たるステップアップを遂げれば良い。