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4大会連続五輪出場の北島康介。
“4年間で0.01秒縮める”という凄み。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2012/04/25 06:00

4大会連続五輪出場の北島康介。“4年間で0.01秒縮める”という凄み。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

200m平泳ぎの選考レースを終えて、会見する北島康介(右)と立石諒。北京オリンピックの際に話題になった名セリフ「なんも言えねえ」を自ら口にして会場を沸かせた。

強い若手の追い上げを上回る成長ぶりを見せるベテラン。

「強い若手もいるし、もっと厳しい戦いになる」

 200mを前に北島がそう語っていたように、立石の成長は著しい。

 熾烈な争いが予想された決勝で、北島が前半からリードし、最初の100mは日本記録を上回るペース。後半に強い立石もついていく。残り50m、立石が追い上げを図る。だが北島は譲らない。

 そのまま北島がトップでゴール。2分8秒00。昨年、上海で行なわれた世界選手権の同種目の優勝選手を上回るタイムだった。

「いい選考会になったんじゃないかと思います。最後は必死でした。前半飛ばしていくのが僕の持ち味だし、まだできると証明できました」

 大会を通じて、泳ぎ、表情、言葉の端々、そのすべてに、充実感が漂っていた。

 終わってみれば、100mでの日本記録更新が示すように、オリンピックに向けてあわせてくる、北島の強さが再確認できた大会だった。

昨夏、100mで4位に終わった北島は、ひとり、部屋で泣いた。

 ただ、その強さを、北島がやすやすと手にしているわけではない。

 100mの後の言葉が象徴的だ。

「これだけ頑張っても0.01秒しか縮められないことで、0.01秒の重みを感じました」

 記録を短縮することの価値を、そして日本選手権へ向けてどれだけ必死に取り組んできたかを表していた。

 北島は、昨年の世界選手権の100mで4位に終わったあと、部屋で泣いたという。

 その悔しさをばねに、100mでも勝ちたいと取り組んできた。どうすれば速く泳げるのか、必死に考えた。試行錯誤の結果のひとつとして、「ここだけを強化するということじゃなく、全体を考えよう」という意識が生まれ、滑らかな泳ぎにつながった。

 ハードなトレーニング、可能性の徹底的な追求、それらがあって北島は圧巻の泳ぎを見せたのだ。

【次ページ】 「あそこまでいくと、達人の域でしょう」

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