日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
サッカー日本代表、“奇跡”の代名詞。
川口能活は南アをまだ諦めていない!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/05/05 08:00
DF陣への指示と連動したポジショニングは他の選手間でも評価の高い川口。オシム監督も岡田監督もキャプテンマークを預けたそのキャプテンシーが、今こそ求められるはず
運命のメンバー発表が近づいてきた。スポーツ新聞、サッカー専門誌ではサプライズとして小笠原満男、田中達也、金崎夢生、吉田麻也ら、過去に招集歴のある選手、さらには未招集ながらガンバ大阪でブレイク中の平井将生を候補に挙げているところもある。セルビア戦でよもやの大敗を喫したことから、やはり起爆剤となり得るサプライズ選考を期待する向きがあるようだ。
再び、または新しく候補に挙がる選手たちがいる一方で、これまでの岡田ジャパンのメンバーのなかで名前が挙がらなくなってしまった選手たちもいる。しかし彼らはたとえメンバー入りする可能性が極めて少ないとしても、一縷の望みを持って発表当日までアピールを続けていくことになる。その一人に、右脛骨骨幹部骨折という全治6カ月の大ケガを乗り越えて4月25日に練習試合で実戦復帰を果たしたばかりのべテラン、川口能活がいる。強いメンタルを持ってメンバー発表の期日に間に合うメドをつけた彼の執念には恐れ入るばかりだ。
数々の「奇跡」を起こしてきたベテランだから今回も……。
『川口、奇跡のサプライズ選出!』――。
実際にこんな事態が起こるかと言えば、現実的に考えて“サプライズ枠”のなかでもより可能性が低い部類に入る。川口がケガから復帰したといっても、試合勘の問題もあれば、コンディションの問題もある。それに昨年1月のバーレーン戦以来まったく呼ばれてもいない。岡田武史監督は川島永嗣、西川周作の20代の実力者を継続して招集しており、楢崎以外のキーパーは次世代の選手を選ぶ方針であることは半ば決定事項のようにも思える。
だが私のなかでは心の片隅で「ひょっとしたら……」という思いが不思議と消えてなくならない。それはおそらく、川口の残してきた足跡と無関係ではない。28本のシュートを浴びながら神がかり的なセーブで失点を許さずに勝利につなげたアトランタ五輪のブラジル戦や、PK戦で1-3の状況から相手を4人連続で失敗させて勝利をもぎ取ったアジアカップ中国大会のヨルダン戦。このふたつの試合の「奇跡」は川口の活躍なくしてあり得なかった。川口には「奇跡」がよく似合う。そう思うと、このメンバー発表においても「奇跡」が起こらないとは言い切れない。