黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
“ボランチ”に賭ける小笠原満男。
人事を尽くしてW杯を待つ!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byToshiya Kondo
posted2010/04/30 10:30
岡田ジャパンの“サプライズ”としての予想もある小笠原。岡田監督の「彼(小笠原)は簡単に呼んだり外したりする選手ではない」という言葉を信じたい
4月24日、鹿島アントラーズは横浜F・マリノスに3-1で勝ち、リーグ戦で4試合ぶりの勝利を収めた。その試合で1ゴール1アシストと勝利に貢献した小笠原満男のプレーは、まさに圧巻だった。
イ・ジョンスの先制点となったFKは、DFとGKの間に蹴る絶妙かつ精度の高いボールだった。また、今季初ゴールは、マルキーニョスがドリブルでセンターバックを引きずり出し、薄くなったファーサイドを見て、走り込み、冷静に決めたもの。さらに、30、40mの局面を一気に変える得意のロングパスも冴えわたった。
しかし、小笠原がピカ一の凄さを見せたのは、攻撃から守備に転じる時の切り替えのスピードと腰の強い守備である。
もともとは、攻撃的MFである。ドイツW杯の時は「いつもゴールを意識して、点に絡むプレーをしたい」と語っていたが、'06年8月にイタリアのメッシーナに移籍してから考えが変わった。
「あっちは自分で何かアクションを起こさないと何もしないままで終わってしまう。自分からボールを取りに行ってゴールに向かうという姿勢でやらないと、ボールが頭の上を飛んでいくだけになるんで。だから相手からボールを奪うこと、セカンドボールを拾うことを意識してプレーしていた」
日本で最も攻守のバランスがいいボランチは、小笠原だ。
小笠原にとってラッキーだったのは、鹿島に復帰後、オリヴェイラ監督が前からプレッシングを掛けるサッカーを実践していたことだ。イタリアで習得した守備の強さを評価され、ボランチとして起用された。
それがハマった。
ゴールを意識していた4年前とは異なり、今は「守備の人なんで」と、まずは守備ありきを明言し常にそれを自分の意識に働き掛けている。だから判断に迷いがない。マリノス戦も中村俊輔のところにボールが集まると見るや、「狙っていた」との言葉通り単独で奪いに行ったり、仲間をうまく使ってボール奪取に成功し、日本代表のエースにほとんど仕事をさせなかった。
「そういうプレーができる選手、攻守のバランスのいい選手は、日本だと満男しかいないと思う」
同僚の中田浩二は、そう断言する。
日本代表のボランチの顔触れを見てみると、遠藤保仁、長谷部誠は攻撃>守備の選手であり、稲本潤一、阿部勇樹は攻撃<守備な印象だ。小笠原はそのバランスが等しく、どちらの能力も非常に高いと見る。過去2大会のW杯出場を始め、経験も豊富だ。さらに、鹿島でキャプテンを務めているように、リーダーシップも発揮できる。イタリアでメンタルも鍛えられ、ドイツW杯の時、自分の感情を押さえることができず不満気な表情を見せた面影は、もうない。そして、何よりも現在のプレーは小笠原を、W杯で見てみたいと思わせるのに十分な内容だと思わせる。代表の中盤の選手が調子を落としている中、小笠原に期待する声が日増しに高まってきていると感じる。