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“ボランチ”に賭ける小笠原満男。
人事を尽くしてW杯を待つ! 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byToshiya Kondo

posted2010/04/30 10:30

“ボランチ”に賭ける小笠原満男。人事を尽くしてW杯を待つ!<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

岡田ジャパンの“サプライズ”としての予想もある小笠原。岡田監督の「彼(小笠原)は簡単に呼んだり外したりする選手ではない」という言葉を信じたい

「俺だってW杯に、行けるものなら行きたいですよ」

「俺だってW杯に、行けるものなら行きたいですよ」

 小笠原は、切ない胸の内を明かす。

「ただ、現実的には厳しい。代表の試合は2試合しか出ていない。何試合も出ていれば、それなりに可能性もあると思うけど……」

 小笠原は今年1月、日本代表に3年半ぶりに復帰した。「30歳の新人」(今年1月時点)として自ら積極的に若手に声をかけ、「自分らしさを出す前にチームのやろうとしていることを覚えることを優先する」と、チームコンセプトを理解し吸収しようとした。

「だって、入ったばかりで偉そうにしているわけにはいかないでしょ。そりゃ年令は上だけど、俺はこうだからこうしろよって感じでもない。ポジションもこだわらない。自分のことよりも、みんなのいいところをうまく引き出してあげたいと思う。とにかくみんなが3年かけてやってきているのを全部やるのは無理だけど、できるだけ近付いていかないといけないんで必死っすよ」

 九州の指宿合宿では、練習試合などで前へと急ぐチームにあって「タメを作って、ゆっくり回す時があってもいい。前に行ってダメなら、もう1回後で回してから仕掛けることも大事」と、ベテランらしい戦術眼でチームに変化をつけた。岡田監督も「満男は、期待していた以上によくやっている」と、高く評価したのだ。ピッチ上での抜群の統率力と闘志溢れるプレーで存在感を増していった小笠原は、チームにとって、重要なピースになると期待された。

「W杯って、悔しい思いしかしていないからね」

 だが、ベネズエラ戦は攻撃的MFとして起用され、いつもの“らしさ”をアピールすることができなかった。東アジア選手権では、スタメンで起用されたのは香港戦の1試合のみ。62分間の出場だった。

「もっと試合に出たかったね。どっちの試合もシュートは打てないし、点も入らないんでイライラしていた。攻撃もショートパスだけだと苦しいんで、もっとサイドを使ったり、サイドチェンジをしたりいろいろ工夫をしたかったんだけど、そういうのもうまくできなかった。だから……なんか悔しい思いしかなかったね」

 捲土重来を期したが、3月のバーレーン戦、4月のセルビア戦のメンバーリストに、小笠原の名前はなかった。まだ、力の半分も出せていないのに、見せるチャンスが与えられない。悔しい思いを噛み締めながらもW杯への思いは、募るばかりだった。

「W杯って、悔しい思いしかしていないからね。'02年日韓の時は、ほとんど試合に出れなかった。'06年ドイツの時は、クロアチア戦とブラジル戦に出れたけど何かをやれたわけじゃないし、勝てなかったんで喜べる大会じゃなかった。次は、自分も日本も喜べる大会にしたいっていう気持ちが強い。だからW杯に出たいけど、こればっかりは自分がそう思ってもね。自分が行きたいって言って、行けたらいいけど、そういうもんじゃない。じゃチームで点を取れたら代表に入れるということでもないでしょ」

【次ページ】 理屈抜きで「そこにいたい」。それだけの価値がある。

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