プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ついにクラブの身売りが表面化。
散々なリバプールを翻弄する「運命」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAction Images/AFLO
posted2010/04/29 08:00
ファンが嫌っていたアメリカ人オーナーがついにクラブを手放すことに。しかし、新しいオーナーがファンが納得できる人物とも限らない……
8月までに売却できなければ主力選手放出の可能性も。
ただし、商談成立は難儀すると思われる。売却を進めるためにクラブに招かれたマーティン・ブロートン新会長(チェルシー・ファン!)が「資金の全てをローンで賄い、返済をクラブに押し付ける買収案に興味はない」としていることから、現実的な交渉相手は限られる。しかも、表向きには年内の売却が目標とされているが、実質的には8月までの今後3カ月間が勝負になる。それまでに新たな後ろ盾の目処が立たなければ、12月が借入金返済期限であるため、夏の移籍市場で主力選手の売却を強いられる可能性が高いからだ。
エースのフェルナンド・トーレスには、資金力世界一のマンチェスター・Cが早くも興味を示している。トーレス自身は残留の意志を何度も公言しているが、「あと3、4人はトップクラスの選手が欲しい」と経営陣への注文も繰り返し口にしている。現体制のまま夏を迎えれば質の高い補強は困難となり、自ら移籍を検討しても不思議ではない。
「リバプール一筋にはこだわらない」 ギャラガーは移籍を匂わす。
4月に入って同様のコメントを出したスティーブン・ジェラードも、今度こそ身の振り方を考えかねない。リバプールのキャプテンは、トーレスに故障が続いたこともあり、トップ下とセンターハーフの他、ストライカーまでこなしながら不本意なシーズンを送るはめになった。5年前にもチェルシーへの移籍話で揺れたが、今年で30歳になるジェラードに、念願のプレミア優勝を狙う時間は限られている。
ジェラードと並ぶクラブの象徴であるジェイミー・キャラガーは、すでに「リバプール一筋にはこだわらない」と発言済み。昨夏に加入したばかりのアルベルト・アクイラーニとて、怪我が治ってもベンチスタートが続く日々に嫌気が差し、1年でチームを去ることになるかもしれない。昨冬からユベントス行きの噂が絶えないベニテスには、トーレスを連れてチームを“鞍替え”するとの説まで浮上した。