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オープン戦の勝敗に一喜一憂セヨ!
DeNAは開幕前優勝を本気で目指す。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/03/18 08:01
昨年まではほんの一握りしかいなかった報道陣が、今季は春季キャンプから殺到している横浜DeNAベイスターズ。選手の調子よりも中畑清監督の一挙手一投足が連日のテレビ、新聞などを賑わせている。
中畑DeNA、7年ぶりの単独首位!(ただしオープン戦)
しかし、まぁ。昨年オフに横浜DeNAになって以降、いい話しか聞こえてこない。キャンプを取材しても、現場の雰囲気は昨年以上によく、選手やコーチからもむちゃくちゃやる気が伝わってくる。
そしてキャンプが終わるころ。中畑監督からこんな声が聞こえてきた。
「オープン戦といえども勝つことを目標に、勝ちたい気持ちを持ち続けてやっていく」
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その一言で、今年もまたオープン戦は勝利が目標となった。苦いものがこみ上げてくる。
だが、今年は大きな違いがあった。何って……勝ちに行って勝てているのだ。
10日の西武戦では国吉が5回無失点の好投に後藤が涌井から2ラン、ランナーが出れば足でかき回し、投手陣も崩れず3対1で勝利。翌日の試合も、スクイズで決勝点を挙げるなどなど、貪欲に勝利を求める野球で、ここまで6勝1敗で7年ぶりにオープン戦単独首位に立っていた。
いやいや。信じない。
オープン戦の勝敗で一喜一憂することほどバカバカしいものはないのだ。
と、鉄の誓いを思い出すのだが、今年はそう思っている傍から喧しい声が聞こえてくる。
「勝ち続けると不安になるね」(中畑監督談)
「こんなに勝っちゃっていいのかなと思うけれど、選手がよく頑張ってくれています! これがシーズン中だったら連日涙、涙の勝利だね」(3月4日楽天戦勝利後)
「手も足も出なかった。試合前から圧倒されたまま、ギブアップしているムード。これが去年までもあったものかもしれないけど、そういうの大嫌い」(5日ソフトバンク戦敗戦後)
「勝ちグセっていい。ただ勝ち続けると不安になるね」(10日西武戦勝利後)
「ちょっとムッときた」(14日ロッテ戦敗戦後)
……なんということだ。
オープン戦の結果で、先頭に立って一喜一憂しているのは中畑監督だった。それも力の限り。
熱い。熱いぜ。これがベイスターズが忘れていた熱。勝ったら喜び、負けたら悔しがる。あまりにも負けが多すぎたために多分、選手も、ファンも、希薄になってしまっていたであろう感情が、中畑清の熱によって呼び起される。
最高だ。この人ほど燻っていた感情を煽りまくってくる、最高のアジテーターはいない。就任が発表された時は嫌な顔してごめんなさい。カラ元気ハツラツとか書いてごめんなさい。