野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
オープン戦の勝敗に一喜一憂セヨ!
DeNAは開幕前優勝を本気で目指す。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/03/18 08:01
昨年まではほんの一握りしかいなかった報道陣が、今季は春季キャンプから殺到している横浜DeNAベイスターズ。選手の調子よりも中畑清監督の一挙手一投足が連日のテレビ、新聞などを賑わせている。
オープン戦の勝敗を語ることほど無意味なことはない。
そんなこと、今更書くべきものでもないが、その試合の持つ性質が「開幕への調整」と「若手に機会を与える場」である以上、結果なんてものは二の次三の次。当落線上の選手にとっては大事な生き残りの場であるが、主力組にとってオープン戦なんてものは肩慣らしとアイドリングの場。そこで勝ったと喜んでみたところで、スタートラインの手前でアップする選手を全力で追い抜いて喜んでいるのと同じ。
それはファンとて同じことで、この時期のスタンドは、久しぶりの再会を懐かしんだり、今季から新設された応援歌を試してみる和やかな場。この時期の試合に負けたからといってヤケ酒を呷る人もいなければ、選手に罵声を浴びせることもない。「この試合でホームランを打ってくれたら手術を受けるよ」と決心する病気の子供も、多分いない。
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ただ、勝つとなると少しばかり話は別だ。オープン戦でもやっぱり勝つと気分がいい。特に低迷するチームのファンなどは、オープン戦でちょっとチームが勝っていると「今年は優勝だ」なんて軽口もついつい叩いてしまうものだ。
だけどね。アレも本気で言っているわけではないのですよ。
オープン戦の結果に一喜一憂するのはバカがやることだ。
かつて低迷期にあった阪神ファンの方なども感じられたことはあるやもしれないが、「オープン戦の好調にヌカ喜びする下位チームのファンの図」というのは、いつの時代も一定のニーズがあるらしい。毎年毎年テレビには街頭インタビューが取り上げられるし、職場、学校、その他、人が集まる場所があれば、他球団ファンに「オープン戦強いねぇ」と必ず水を向けられる。
ただし、そこには「ヌカ喜べ」という空気が存在するので、こちらとしてもヘンな義務感に駆られてしまい、「優勝だよ」とやっておく。さらに興が乗れば「今年は遠藤20勝、斉藤20勝、欠端15勝、中山50セーブ」と、勝利ラインを無視した天文学的予想もつけておけば10人中9人は満足してくれる。そんなことを小学生時代に覚えた。
で、シーズンに入れば何事もなく負けて、春の椿事で片づけられてはため息ひとつ。
そんなことを毎年繰り返しているうちに、やがて少年の眼は濁り、己の姿を鑑みては心に深く刻む。
「オープン戦の結果に本気で一喜一憂するのはバカだ」という言葉を。