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野球漫画『グラゼニ』的視点で知る、
“ゼニを稼げる”ルーキーの見分け方。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2012/03/16 10:30

野球漫画『グラゼニ』的視点で知る、“ゼニを稼げる”ルーキーの見分け方。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「雄叫びとかガッツポーズは自然と出る。来年もピンチを抑えたら、自然にやっちゃうと思います」と発言している田中は、今季も相手をねじ伏せるような投球を見せてくれるはず。星野監督も雄叫びを容認するコメントを出している。

『グラゼニ』という野球マンガがある。

 主人公の凡田夏之介は、年俸1800万円の左の中継ぎ投手という、野球マンガにしては希有な設定の作品だ。

 凡田の趣味は、選手名鑑を読むこと。厳密に言うと、選手名鑑でそれぞれの選手の年俸をチェックすることだ。

 ちなみにタイトルの『グラゼニ』は、〈グラウンドには銭が埋まっている〉というプロ野球界でよく使われる言い回しを凡田が短縮してそう呼んでいることに由来している。

 しかし、〈12球団の一軍選手だったら全員の年俸をソラで言えます〉という「特技」の弊害として、自分より年俸が低い選手は見下ろして投げるためいいボールが行くのだが、自分より高い選手だと萎縮してしまいボールが行かなくなる。ただし、5000万円を越える選手については、逆に開き直るのか、けっこう抑えることがある。

 何だか、ありそうな話である。

甲子園を連覇した監督が併せ持っていた繊細さと傲慢さ。

 この物語を読んで、日本の跳躍競技指導の第一人者、村木征人の言葉を思い出した。村木は元三段跳びの選手で、1968年のメキシコ五輪、'72年のミュンヘン五輪と、2大会連続でオリンピックにも出場している。

 主に筑波大陸上競技部で指導にあたっていた村木は、ノーベル物理学賞の受賞者で、一時、筑波大の学長も務めていた江崎玲於奈にこんなことを言われたことがあるという。

「『教わることはいくらあってもいいけど、偉い先生だけは絶対につくるな』と。要するに尊敬し過ぎるな、崇拝し過ぎるなよということをおっしゃっていた。そうでないと、人がやったことのないものはできないじゃないですか。発見、発明というのは、今までの説を否定することから始めなければいけないわけですから」

 その話を聞きながら、元駒大苫小牧高校の監督、香田誉士史を思い浮かべていた。あの人がまさにそうだったな、と。

 人一番臆病で繊細な香田は、「教わる魔」のような面がある一方で、開拓者には不可欠な傲慢さも持ち合わせていた。だからこそ、それまで実績を残していなかった北海道のチームを率いて、'04年夏、'05年夏と甲子園で連覇し、さらに'06年夏も決勝まで進むという快挙を成し遂げることができたのだ。

【次ページ】 格上の相手にも気後れしない監督に感化された選手たち。

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