日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
「サプライズ」は小笠原満男!?
“日本の心臓”に求められる役割。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2010/04/19 10:30
2月のベネズエラ戦や香港戦の直前にはボランチとして練習し、またボランチ起用が報道されていた小笠原。ところがいざ本番では何故か攻撃的MFとして起用されてしまう……
攻撃的MFではなくボランチとしての小笠原満男を。
果たして「長谷部型」に適役がいないのか――。
いや、候補がいないことはない。タイプは違えども長谷部の役割を担うのであれば、1月の鹿児島合宿で初めて招集された小笠原満男の存在がすぐに頭に浮かび上がってくる。
小笠原はその合宿で本来のボランチではなく攻撃的MFとして呼ばれている。先発したベネズエラ戦、香港戦では連係面のぎこちなさものぞかせ、結果を残すことはできなかった。以降、日本代表には呼ばれることもなくなった。
4年前ならともかく、今の小笠原に2列目のポジションでいきなり勝負させるには無理がある。むしろボランチとして連動性を重視した攻め上がりや、汗かき役としての運動量、ボール奪取力など、長谷部と共通する部分を重視すべきであろう。カバリングの判断などは年齢を重ねて磨きがかかっている。
現在リーグ戦で上位に位置し、ACL無敗の鹿島で小笠原は好調を維持している。ボランチのテコ入れを指揮官が検討するのであれば「ボランチ小笠原」としてあらためて適応性をチェックしてもらいたいものだ。
「新人のオッサン」はチームをまとめるサポート役に適任。
昨年末、岡田監督は日本外国特派員協会で設けられた会見の席で小笠原の招集について聞かれ、このように答えている。
「彼には非常に(高い)個人能力がある。だが、チームは優秀な人を上から順に選ぶわけではない。バランスを考えなければならない。必要ないときに呼んで外したら、次に必要なときに呼べなくなってしまう。それだけの立場にある選手」
指揮官の言うとおり、実力のある選手を素直に上から取ったとしても強いチームができるわけではない。チームというのはナイーブなものだ。この時点において、控えに回ったときの小笠原は不満分子となるリスク、チームに対する影響度を岡田監督は考えていたのかもしれない。
しかし、それは杞憂に過ぎないのではないか。1月に招集されたときの小笠原は自らを「新人のオッサン」と呼んで、自分から今のチームに馴染もうとしていた。若手に積極的に声をかけ、実戦練習を終えると周囲とのコミュニケーションを欠かさなかった。東アジア選手権では3試合中2試合でサブに回ったものの、彼の口からは「チーム」という言葉がよく出ていた。チームを第一に考えていたことがうかがわれる。W杯2大会の経験に加え、鹿島ではキャプテンシーを発揮してチームをまとめている立場。「長谷部型」を担えるというだけでなく、たとえサブに回ったとしても今の小笠原なら陰でチームを支えることのできる存在であるように思える。