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阪神・一二三慎太の決断は報われる!?
投手から野手に転身する事例を検証。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/01/22 08:01
「もうピッチャーに未練はない。ピッチャーでは無理だったけど、野手ならリハビリしながらやっていけると思う。もう自分は野手って決まりましたので、今年は野球に没頭したい」。鳴尾浜での自主トレで1月から始動している一二三慎太選手
中田、糸井らの成功例ばかりではない転向の決断。
本格派右腕としての潜在能力の高さを知るものからすれば、それほど現実的な話には思えなかったものだが、糸井は球団の期待に応える活躍で大ブレーク。転向後2年目の'08年に頭角を現すと、'09年からレギュラーを獲得。ベストナインとゴールデングラブ賞を受賞した。'10年にもゴールデングラブ賞を受賞、'11年には3年連続のゴールデングラブ賞と初めてとなる最高出塁率のタイトルを獲得した。今や、メジャーのスカウトも注目する選手へと成長した。
とはいえ、片山や中田、糸井のように、逸材たちの選択は成功者ばかりを出してきたわけではない。投手にこだわるあまり、あるいは、その決断時期が遅かったために、苦しんでいる選手は多くいる。
彼らの名前をここで挙げないが、投打両面の能力が高いからこそ陥ってしまう難しい選択なのだ。転向したからといって、成功する保証があるわけでもなく、リスクは付きまとう。
一二三の打者転向は右打者不足の阪神には吉報だが……。
一二三に話題を戻すと、阪神には生え抜きの右打者の絶対数が不足している。逆に右投手は、溢れかえっている。チーム事情を考えれば、決して悪い選択ではない。2年目での転向という早い決断も、一二三にとっては追い風になりえるかもしれない。しかし、一方で、体にメスを入れてでも熟成して、育てるべきだ。それだけの投手だという声がないわけでもない。
果たして、一二三の打者転向が吉と出るのか、凶と出るのか。
甲子園準V右腕は、野球人生の岐路に立っている。