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不振のビジャレアルとアトレティコ。
あまりに対照的な監督交代の実情。 

text by

横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byMutsu Kawamori

posted2012/01/09 08:01

不振のビジャレアルとアトレティコ。あまりに対照的な監督交代の実情。<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

アトレティコの監督に就任したシメオネ。かつて、1994~1997、2003~2005に選手として在籍。欧州クラブの指揮を執るのは、カターニャに次ぎ2度目

黄金時代を知るシメネオ新監督は救世主になれるか。

 今回マンサーノの後任に選ばれたシメオネは、近年のクラブ史の中で最も輝かしかったひととき、1995-1996シーズンの2冠獲得を経験しているOBであり、この特殊なクラブをよく知っている男だ。

 就任後最初の練習にファン4000人を集めた人気者で、監督としては母国アルゼンチンでエストゥディアンテス・デ・ラ・プラタを優勝に導いたことがある。選手に伝染する強烈な負けん気も持っている。さらにエースのファルカオとはリバープレート時代も一緒だったし、中盤でアグレッシブにボールを追い回すスタイルをチームに植えつけるノウハウも確立している。

 紛うことなき適任者であり、アトレティコの救世主になり得る監督だ。

 しかし、ヒル家とセレソが発する強い毒に抗っていけるかというと不安は残る。上層部にしてみれば、「チョロ」の愛称でファンに親しまれ支持されているシメオネの監督起用は、自分らへの非難を逸らす格好の盾。そこにヒビが入っても、力を合わせて修復するのではなく、これまでの49人と同様、ポイ捨てするだろう。楽観視は、やはりできない。

ビジャレアルは下部チーム監督のモリーナを抜擢。

 そんなアトレティコとは正反対のビジャレアルは、奇しくも2冠のアトレティコでシメオネのチームメイトだったモリーナを新監督とした。

 彼は2007年にレバンテで引退した後、2009年3部のビジャレアルCで監督を始め、昨季末2部のBチームを指揮するようになったばかり。それを考慮するとトップチームは時期尚早という気がしなくもないが、経験の多寡が問題にならないことはグアルディオラが証明しているし、前からどんどんプレッシャーをかけ、両サイドを広く使って攻撃的にいくモリーナのスタイルは、ビジャレアルの現チームにおそらく合う。

 ガリードの足を引っ張った故障者の数――戦力不足さえ知恵をもって克服すれば、「自分の会社では内部の昇格を信用し、信頼している。自分のビジネスを赤の他人に任せたりはしない」という企業家としての理念をクラブに持ち込んだロイグ会長の抜擢に応えられるだろう。

 置かれた状況は厳しく、監督としての実績はないがクラブのバックアップを当てにできるモリーナと、状況的にはマシで実績はあるもののクラブの中核に癌を抱えるシメオネ。最終的にどちらが良い結果を残すのか、ちょっと注目したい。

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