リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
不振のビジャレアルとアトレティコ。
あまりに対照的な監督交代の実情。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byMutsu Kawamori
posted2012/01/09 08:01
アトレティコの監督に就任したシメオネ。かつて、1994~1997、2003~2005に選手として在籍。欧州クラブの指揮を執るのは、カターニャに次ぎ2度目
昨年末、ビジャレアルとアトレティコがそろって監督を替えた。
ともにEL出場圏内で争うと予想されながら、12月を終えて順位は二桁。国王杯でも格下(前者は2部Bのミランデース、後者は2部Bのアルバセテ)に敗れたのだから、どちらのケースも仕方がなかった。
ただ、両クラブの特徴を考えると、2つの監督交替劇はその重さと意味合いが異なる。
ビジャレアルは1部に定着した2000-2001シーズン以降、一昨年のバルベルデを除いてシーズン半ばに指揮官を更迭したことはない。金は出しても口は出さないロイグ会長が一度選んだ監督をとことん信頼し、少々の苦境は我慢することを知っているからだ。人口5万人少々の小さな町を本拠とする小クラブが、わずか10年でスペインを代表する強豪のひとつになった理由のひとつである。
ところが、そんなロイグ会長がいまのままでは立て直せないと判断したのだから、事態は相当深刻といえる。解任されたガリードは2年前のデビュー以来、監督として高い能力を示してきたが、遂に味噌をつけてしまった。
監督更迭は恒例行事!? 計画なきアトレティコの愚行。
一方で、アトレティコの監督更迭は日常茶飯事。驚くには値しない。極端な例ではあるが、1992-1993、1993-1994シーズンにはそれぞれ1シーズンで6人もの監督を取っ替え引っ替えし、この24年間で延べ49人もの監督を使ってきたクラブだ。
また、それゆえ不振の本当の責任者は監督でなく、25年前の1987年からクラブの実権を握り続けているヒル家(故ヘスス・ヒルとその息子で現取締役のヒル・マリン)と、彼らの傀儡であり続けているエンリケ・セレソ会長であることを多くの人が知っている。
なにしろ、彼らはチームの安定などまったく考慮せず、好き勝手いじってはせっかく整えたバランスを崩していく。その酷さは2009-2010シーズンのELで優勝を勝ち取った14人のうち9人までを、ほんの1年半で放出してしまったことで十分わかるだろう。
本気で上を目指しているとは到底思えない愚行。そのくせビジネスとして巧みにやっているわけでもなく、毎年無計画(としか思えない)に金を使うばかりなので、借金はかさむが力の積み重ねはなし。
スペインのあるベテラン記者がうまいことを言っていた。
毎年豪華な補強を行うアトレティコは、8月の時点ではチャンピオン。9月は優勝候補。10月はその可能性が低くなり、11月にはボロボロで、12月になるとゾンビ……。
だから監督を替えても希望はなかなか持てない。