プロ野球PRESSBACK NUMBER
西武黄金期の「常勝マインド」の系譜。
秋山から小久保へ引き継がれたもの。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/11/22 12:00
シリーズMVPに輝きお立ち台に上がった小久保裕紀は、「なんでオレが、と思っている人も多いでしょう。日本一になれたのはみんなの力。ボクが代表して(賞を)いただいただけなので、みんなにお返ししたいと思います」と語ってヤフードーム満場の笑いをさらった
今季2度の骨折と首の痛み……満身創痍の大黒柱。
今シーズン、開幕戦で右手親指を骨折。夏には肋骨も骨折した。終盤には首の痛みに耐えながらもプレーした。そして、シリーズ開幕直前の紅白戦では自打球が右足に直撃。それでも、小久保はグラウンドに立ち続けた。
満身創痍ながらも、粉骨砕身の精神で試合に臨んだ理由。それは、彼が誰よりも「姿勢」を大事にする選手だからだ。
それは、小久保自身、選手時代の秋山監督から学び、受け継いだものでもある。
彼は以前、そのことについて「特別なことはしていませんよ」と謙遜しながらも、このように話してくれたことがある。
「現役時代の秋山さんからは、練習に取り組む姿勢とか試合に臨む心構えとか、多くのことを学びましたから、教わったことを率先してやっているだけですよ。僕のそういった姿を下の世代も見て学んで、成長してくれれば嬉しいですね」
秋山から小久保、そして次の世代へ引き継がれる「強者の心得」。
小久保は、40歳で日本シリーズMVPとなり、秋山監督がダイエー時代の'99年に記録した37歳の最年長記録を更新した。
「すいません、監督」と小久保は自嘲気味に喜びを口にしたが、西武の黄金時代を支えた秋山監督から受け継いだ常勝のマインドをプレーで体現してみせた彼のMVPは、あるいは必然だったのかもしれない。
8年ぶりの日本一を手にし、常勝ソフトバンクは完全復活を遂げた。
秋山から小久保、そして次の世代へ――。「強者の心得」を継承し続ける限り、ソフトバンクの力が衰えることはない。