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王者の苦戦と最終決戦の再浮上。
~パッキャオvs.メイウェザー実現!?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/11/20 08:01
一時は実現寸前まで行ったパッキャオ(左)対メイウェザーのドリームマッチだが
2対0でパッキャオが判定勝ちしたが採点は僅差。
ただ、パッキャオが負けるとは私にも思えなかった。マルケスのほうも、右のカウンターこそ有効だったものの、そこから先の追撃がない。加えてパッキャオは顎が頑丈だ。マルケスの右をかなりまともにもらっても前進を止めない。こういう状況では、アグレッシヴな姿勢を見せたほうが、採点上、どうしても有利になる。
パッキャオが勝ちそうだ、と思った理由はもうひとつある。10ラウンド以降、マルケスの足がガス欠を起こしたことだ。いいたくないが、やはり年齢が響いたのかもしれない。
というわけで、三部作最終章はパッキャオの勝利に終わった。ただし、判定は2対0の僅差。ジャッジのひとりがドローで、残るふたりも2ポイントから4ポイントしか差をつけていない。
王者の苦戦を見てメイウェザーは勝機ありと計算!?
さて、ここで気になるのが、またしても例のドリームマッチである。パッキャオとの対戦が延々と待ち望まれているフロイド・メイウェザーは、マルケス同様、カウンターが巧いボクサーだ。しかも彼は、マルケスよりも速く、マルケスよりも身体が大きく、マルケスよりも若い。つまり、もしドリームマッチが実現した場合、なんらかの新しい戦略を編み出さないかぎり、今回同様、パッキャオが苦戦を強いられることは十分に予想される。
逆にいうと、メイウェザー側はいくらかなりとも「行ける」という感触を得たのではないか。先日の試合(対ビクター・オルティス戦)を見るかぎり、メイウェザーもピークを過ぎた感は否めないが、今後1年以内なら、両者ともまだまだ内容のある試合を見せることができるはずだ。パッキャオの恩師フレディ・ローチも「最終的にはメイウェザーと戦わなければならないだろう」と発言している。
そう、くどいようだが、ふたりのドリームマッチはいまからの実現でもけっして遅くはない。パッキャオ対マルケス戦のパート4ではやはりスリルと鮮度が落ちる。「夢の対決」が「見果てぬ夢」で終わらないことを、私はしつこく願っている。