スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
王者の苦戦と最終決戦の再浮上。
~パッキャオvs.メイウェザー実現!?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/11/20 08:01
一時は実現寸前まで行ったパッキャオ(左)対メイウェザーのドリームマッチだが
接戦だった。
マニー・パッキャオは、明らかに手を焼いていた。2011年11月13日、パッキャオ対フアン・マヌエル・マルケスの3度目の対決。
'04年に戦ったとき(引分け)や、'08年に戦ったとき(パッキャオが僅差の判定勝ち)もきびしい内容だったが、同じような事態が再現されると予想した人は少なかったのではないか。試合前の賭け率は、7対1で圧倒的にパッキャオが優勢だった。
ひとつには、マルケスの年齢があった。
彼は38歳になっていた。
7年前、フェザー級でグローブを交えたとき、マルケスは30歳で、パッキャオは25歳だった。両者ともまだほっそりとしていた。いや、小柄といったほうが適切かもしれない。
パンチの正確性で上回る挑戦者を王者は攻めあぐねた。
今回はWBOウェルター級のタイトルがかかっていた。王者がパッキャオ。挑戦者がマルケス。契約重量は144ポンド。
前日の計量時、パッキャオは143ポンドでクリアした。マルケスは142ポンドで楽勝。
しかし試合当日、マルケスは8ポンド増やしてきた。パッキャオは5ポンド増。
これは、戦い方にかなり影響したはずだ。
マルケスのパンチは、予想以上に重い印象を与えた。しかも右ストレートや、右のオーバーハンドが妙によく当たった。パッキャオはぐらついた。怪訝な表情も浮かべた。
もちろん、手数ではパッキャオが上まわっていた。試合後に発表されたスタッツを見ても、ジャブの数は304対182とパッキャオが圧倒している。足を使い、左右にこまかく動いて、パッキャオは右を出しつづけた。
だが、当たった数はあまり差がない。こちらは59対38。着弾率でいうと、21%対19%とマルケスが逆転する。実際、9ラウンドぐらいまでは本当にきわどかった。前に出るのはパッキャオだが、パンチの当たる率ではマルケス。攻めあぐねるパッキャオは、なかなか突破口を見出せない。