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井上尚弥とのスパーリングは「DNAに刻まれるヤバさ」…勅使河原弘晶33歳が振り返る、怪物との殴り合い「僕は尚弥選手と絶対に試合をすると思っていた」

posted2023/12/25 11:02

 
井上尚弥とのスパーリングは「DNAに刻まれるヤバさ」…勅使河原弘晶33歳が振り返る、怪物との殴り合い「僕は尚弥選手と絶対に試合をすると思っていた」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

井上尚弥のスパーリング相手を2度務めた勅使河原弘晶が自身のボクシング人生と怪物との「殴り合い」を語る

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Takuya Sugiyama

 井上尚弥(大橋)とマーロン・タパレス(フィリピン)のスーパーバンタム級4団体統一戦が目前に迫ってきた。バンタム級とスーパーバンタム級で2階級を制したタパレスはこれまでに日本人選手4人と対戦して計4勝1敗の戦績を残している。その中で直近の2021年12月、IBFスーパーバンタム級挑戦者決定戦でタパレスと拳を交えたのが勅使河原弘晶だ。井上とのスパーリング経験もある勅使河原に両王者のボクシング、そして2人への思いを聞いた――。《全2回の第1回/後編はこちら

少年院で読んだ、輪島功一の自伝

 現在30歳の井上尚弥は幼いころからボクシングに打ち込み、アマチュア時代から数々の実績を残して世界にその名を轟かせるスター選手になった。一方、33歳の勅使河原弘晶は同世代のボクサーでありながら、井上とは対照的な人生を歩んできた。幼少期に義母から虐待を受け、すさんだ少年時代を送り、10代には荒れに荒れて少年院に入った。

 自分には生きている価値がないと感じていた。将来は一生、刑務所で暮らすのだろうと思っていた。そんなとき、少年院で手にした一冊の本が人生を一変させた。元世界王者、輪島功一さんの自伝だった。輪島さんは建設現場で働きながらボクシングを始め、25歳でプロデビュー。努力と根性で夢を叶えた“炎の男”として知られる。勅使河原は本を読み終えた瞬間、「19歳の自分にできないわけがない。世界チャンピオンになって、生きている価値のある人間になる」と心に誓ったのだ。

井上尚弥の衝撃

 少年院を出るとすぐに輪島さんのジムの門を叩き、ゼロからボクシングを始めて11年にプロデビュー。がむしゃらに練習し、持ち前の気持ちの強さ、独特なリズムと距離感で徐々に頭角を現わした。2つの敗北を乗り越えて17年10月、WBOアジアパシフィック・バンタム級王座を獲得した。12年にプロデビューした“怪物”は世界2階級制覇を達成し、WBOスーパーフライ級王座の防衛を続けていた。勅使河原が井上と初めてスパーリングをしたのはこのころだ。

 タパレスとの試合を最後に引退し、現在は寿司職人を目指して修行中の勅使河原は当時の衝撃をはっきり記憶している。

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