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眠れる強豪校・関西がついに覚醒!
如水館を破った神懸かり的采配。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/08/17 18:50
地方大会の決勝でも、土壇場の9回で3点差を追いつき同点とした後、延長戦でサヨナラ勝ちするなど、今夏の関西は実力だけでなく運までも味方につけている。自身の高校時代にベスト8まで進んだこともある江浦滋泰監督も、この快進撃に感慨しきり
神懸かり的に采配が当たり始めた江浦監督。
甲子園に乗り込む前、関西は決まって地元の木山神社に必勝祈願に出かけるのだが、その際、江浦は厄年であることを知らされ、厄払いもしてもらったのだという。
そして17日の準々決勝の如水館(広島)戦でも、その効果を証明するかのように、采配がずばずばと的中した。
2-2の同点で迎えた5回裏。無死一塁から、1番・小倉貴大に打たせると、その小倉が左中間を破る二塁打でつないだ。
「彼は足も速いのでゲッツーはないだろうなと思って」
また、それを足がかりに5-2と点差を広げると、1死二、三塁から、今度は6番・関泰典にカウント3ボール2ストライクからスクイズを指示。これもまた見事に成功させた。
「タイミングをはかっていたんですけど、なかなかなくて。でも、2-3になった瞬間、際どいコースに投げられて、空振り三振するイメージが浮かんだ。だから、ファウルになってもいいやと開き直って、サインを出しました。まあ、監督のワガママですね」
そうしてこの回だけで4点を奪い、最終的に8-3で快勝した。
投手を試合に使わないことで気持ちを呼び起こし、再起を促す手法。
'04年、'05年と夏連覇を達成した駒大苫小牧の元監督・香田誉士史が、当時を振り返り「やることなすことうまくいった」と話していたことを思い出す。
また、この日は、エースの水原浩登が限界だと見るや否や、3年春までエース番号を背負っていた左腕の堅田裕太を5回途中からリリーフに送り、その継投策も決まった。
江浦はこの夏、甲子園初登板となった堅田をベンチからこんな風に眺めていた。
「堅田は投げるときも打つときもニコニコしてましたね」
これは先頃、常総学院の監督を勇退した名将、木内幸男が投手を再生させるときによく使った手だ。
試合に使わないことで投げたい気持ちを呼び起こし、それが極限に達したところで登板させ、結果を出させるのだ。