黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
「一人一人が死ぬ気で戦わないと」
遠藤保仁が代表戦の実情を語る。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byToshiya Kondo
posted2010/03/05 00:00
「一人一人が死ぬ気で戦わないと」 遠藤保仁が代表戦の実情を語る。
「俺は、岡田さんを信じてるから」
遠藤保仁は、いつもの淡々とした感じではなく、凛とした口調で、そう言った。
2月14日、東アジア選手権で日本は韓国に1-3で敗れ、3位に終わった。中国戦、香港戦は内容的に乏しく、韓国戦は大敗。特に、韓国戦では3点目を取られた時点で敗戦を受け入れたように覇気を失った。負けている状態でダラダラと歩き、交代した玉田圭司や退場した闘莉王に声をかける選手は、誰一人いなかった。「まとまりがあるチーム」として、あるべき姿とはとても思えず、一体感も失われたように見えた。試合後、サポーターからブーイングが飛び出し、岡田監督解任が声高に叫ばれた。そうした声に遠藤は、珍しく口を尖らせ、強く反論したのだ。
「この敗戦で、岡田さんへの信頼がブレるとかはないよ。それよりも責められるのは、俺ら自身でしょ。チ-ムが本来持っている良さが何も出てなかったからね」
戦う姿勢の欠如と「チームのために」という意識の希薄さ。
遠藤が一番不満だったのは、個々の選手の戦う姿勢の欠如と「チームのために」という意識が希薄だったことだ。個々の能力がズバ抜けた選手がいない分、気持ちで負けず、お互いを補完し合って戦う。それが、この代表チームの最大の特徴だと遠藤は言い続けてきた。だが、韓国戦を始め東アジア選手権で選手たちは、自らチームの在り方を否定するような無様な試合をした。
「みんな、試合に出てることで満足しているわけじゃないと思うけど、今のままじゃ本大会までの間の伸び代もなくなるし、そうなったらヤバイでしょ。誰か一人に頼るチームじゃないんで、一人一人が死ぬ気で戦わないと相手に脅威を与えられない。たとえ、1対1で負けてもカバーし合う気持ちが大事やし、その信頼頼関係の上にあって戦うのが、このチ-ムのいいところなのに……。そういう部分が見えてこんかったし、負けてても引っ繰り返すぞという強い気持ちが感じられんかった。それは、すごい歯痒かったね」
「このままでいいのかなって思って本大会を迎えたくない」
厳しさを求めるのは、ドイツW杯での苦い経験があるからだ。当時、チームは本番前のドイツ戦でピークを迎え、初戦を失って崩壊した。その時、準備の大切さを学んだ。
「W杯を知らない選手が多いから分からないのかもしれないけど、本番は甘いもんじゃないからね。俺らは最高の準備をして、力を出し切って勝てるかどうかのレベル。だから、俺は、このままでいいのかなって思って本大会を迎えたくないんよ。ここまで精一杯やってきて、これ以上ない準備をしてきたと思って本番を迎えたい。みんながその意識を持っていかないと本番じゃ最高のパフォーマンスを発揮することはできないし、グループリーグを勝ち抜くのも難しくなる」