セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテルに長友負傷離脱の悪夢……。
暗雲立ちこめる新監督の舵取り。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2011/08/04 10:31
ガスペリーニは1958年生まれの53歳。ビッグクラブで唯一と言える「3-4-3」のシステムに、長友がどうフィットするか注目だったが……
“守備の国”イタリアで「3-4-3」を根づかせる難しさ。
ザッケローニしかり、マッツァーリ(ナポリ)しかり、守備の国イタリアで、攻撃的な3バック信奉者は異端だ。
新監督が導入するには戦術の理解と浸透に時間がかかる上、主将サネッティやGKジュリオ・セザルら、コパ・アメリカへ出場した南米勢の疲労を考慮した変則カレンダーを組まざるを得ず、インテルのチーム作りには決定的な遅れが生じている。
新獲得した23歳のMFアルバレスが即戦力として使えそうなことは好材料だが、司令塔スナイデルらビッグネームの去就が定まらないのも、新指揮官にとって悩ましいところだろう。
マンC戦での惨敗で指揮能力を疑問視する声も。
リーグのゴリ押しによって、真夏の北京で戦うはめになったイタリア・スーパー杯直前には、DF長友佑都が右肩脱臼の重傷を負った。完全移籍後、チームの基本戦術が変わったことで、新たに左右サイドハーフとしてのレギュラーを目指していた矢先、ダブリンでのプレシーズントーナメントでの負傷だった。
長友の長期離脱と南米勢の合流遅れによって、懸念は表面化した。
ダブリンでの2試合目、元指揮官マンチーニ率いるマンチェスター・C相手に0対3の失態。そして、長いシーズンへ向けて何より不安視されているのは、巨大なプレッシャーがかかるビッグクラブでの指揮経験が、新指揮官にないことだ。
ガスペリーニ本人は就任後、「強豪と呼ばれるクラブでは、かける資金もエネルギーも膨大だ。結果を出し、選手を納得させた上で、サポーターとクラブを満足させる。これが、われわれサッカー監督の仕事の一部さ」と、優等生発言。
ただし、子飼いの3人はともかく、インテルのロッカールームにいるのは無名の雑兵ではなく、功成り名遂げた英雄クラスばかり。
カリスマ性をもたない将がどんな末路をたどったかは、モウリーニョの後釜に座った昨季のベニテスの例が記憶に新しい。