セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテルに長友負傷離脱の悪夢……。
暗雲立ちこめる新監督の舵取り。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2011/08/04 10:31
ガスペリーニは1958年生まれの53歳。ビッグクラブで唯一と言える「3-4-3」のシステムに、長友がどうフィットするか注目だったが……
インテルの新監督ジャンピエロ・ガスペリーニの愛読書は、中国春秋時代に書かれた『孫子』である。
「単なる軍事論ではなく、私にとってはそれ以上の本だ。日々の暮らしから、サッカーのチーム作りまで教えられることが多々ある」
白髪の将は、新しく強力なチームを与えられ、遠く離れた北京で例年よりいささか早いイタリア・スーパー杯に臨んだ。リーグ開幕まで残された時間はあまりない。
昨季終了後、前監督レオナルドがあっさり辞任。そこから、後任探しの迷走が始まった。
やれ奇人ビエルサだ、いや若手のビラスボアスだ、やはり名将カペッロだ、とメディアも混乱。ついには、あのジーコの名前まで取りざたされた挙げ句、結局ジェノアを解任された後フリーの身だったガスペリーニに決まった経緯があった。
ジェノア時代に育てた選手たちがモウリーニョの3冠に貢献。
もともと彼は、ユベントス育成部門の名コーチとして知る人ぞ知る存在だった。
そこから、トップチームの指導者として下位カテゴリーの地方クラブで経験を積んだ後、2007年に当時2部のジェノアをセリエA昇格に成功したことで全国的な注目を浴びた。
翌シーズンにはジェノアを欧州カップ戦に導き、ジェノバダービー史上初めて3連勝を達成した監督として、サポーターから崇められた。選手の能力を引き出す名伯楽として、英国マンチェスターの名将になぞらえた“ガスパーソン”との愛称を頂戴したのもこの頃だ。
ここ2年で、インテルは国内外の計6つのトロフィーを獲得したが、実はガスペリーニも間接的に貢献している。
モウリーニョの3冠は、FWミリートとMFチアゴ・モッタの働きなくしては到底ありえなかったし、昨季のコッパ・イタリア優勝は、冬の市場での獲得後すぐに主力へ定着したCBラノッキアの奮闘によるところが大だった。
3人は、いずれもガスペリーニがジェノア時代に手塩にかけて育て上げた子飼いであり、今季その伯楽がインテルに導入しようとしている「3-4-3」を根付かせる上で欠かせない選手たちだ。