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チェルシーとインテルが1回戦で激突。
注目される新旧監督対決の行方。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT

posted2010/01/01 08:00

チェルシーとインテルが1回戦で激突。注目される新旧監督対決の行方。<Number Web> photograph by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

ついにスタンフォードブリッジに“帰還”することが決まったモウリーニョ。チェルシーサポーターから受けるのは拍手か、それともブーイングか?

アンチェロッティがファンの信頼を勝ち得ていない理由。

 以前に当コラムで触れた通り、チェルシーでのアンチェロッティは、すでに選手たちからは信頼を置かれている。

 チームのムードはモウリーニョ時代に匹敵するほど良いとも言われる。しかし、今季のスタンフォード・ブリッジでは、いまだに監督を讃えるチャントが歌われていない。つまり、サポーターからの絶対的な支持はまだ得られていないのだ。

 その理由は、ピッチ上で確認できる「アンチェロッティ色」の薄さだろう。2トップとダイアモンド型の中盤という新トレードマークはあるが、前半戦の好成績は選手個々のクオリティとハードワークによる部分が大きい。また、最後尾のペトル・ツェフから最前線のディディエ・ドログバまで、先発イレブン中10名がモウリーニョ時代にスタメンに定着した選手という試合も珍しくない。高い集中力と豊富な運動量は、モウリーニョによって磨かれたチームの特長だ。言い換えれば、新監督は元監督の遺産に頼っていることになる。

セットプレーの守備に不安を抱えるチェルシー。

 加えて現在のチェルシーは、モウリーニョ時代には考えられなかったセットプレーに対する守備の不安を抱えている。弱点をつかれてホームで3失点の引分けに終わった12月12日のエバートン戦は、チェルシー・ファンのブーイングで幕を閉じた。

 一方、今季のインテルは、マリオ・バロテッリ、ウェズレイ・スナイデルら、CKやFKの場面で脅威となる選手を抱えている。

 接戦が予想される中、準々決勝進出を懸けたスタンフォード・ブリッジでの第2レグ(2010年3月16日)でチェルシーがセットプレーに泣くことにでもなれば、ホームスタンドの3万数千人が、アンチェロッティへの皮肉を込めて「ジョーゼーモウリ~ニョー」と歌い出さないとも限らない。

 そうなれば、オーナーのロマン・アブラモビッチが黙ってはいないだろう。チェルシーを牛耳るロシア人富豪は、「どうして自分の名前を歌ってくれないのか?」と、ファンの愛情を一身に受けるモウリーニョに嫉妬し、自らを脅かすエゴと名声を持つ監督を嫌って更迭を決めたのだから。悪夢の再現でCL敗退となれば、アンチェロッティへの期待と信頼を急速に失っても不思議ではない。

【次ページ】 両監督ともに来季の進退をかけた崖っぷちでの戦いになる。

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