なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
実は失速の可能性もあったなでしこ。
前W杯王者のドイツ代表撃破の裏側。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2011/07/12 10:30
丸山桂里奈(まるやま・かりな)の歴史的ゴールシーン。ドイツ戦の直前には、東日本大震災のビデオを見て気持ちを奮い立たせた
笑顔や笑い声が無く、動きが重い……練習風景。
その翌々日の練習を見ても、決して雰囲気が明るくなってこないのが気がかりだった。
雰囲気という表現は、あいまいな感覚でしかないが、それでもやはり笑顔が少ない、高らかな笑い声が聞こえてこない、動きが重いことは明らかだった。
後味の悪い負けが響いているようにも見えたのだが、なでしこたちはそんなにヤワではなかった。
彼女たちはドイツとの対戦を前に、気持ちを奮い立たせていた。
「ドイツに勝つとしたら、今このタイミングしかないと思っていた」と話したのは安藤梢だった。「この大舞台で、開催国に対してやってやろうと思っていた」のは彼女ひとりではなかった。
不動のメンバーで臨んだドイツ戦は、イングランド戦の反省からか集中した入りを見せた。ただ最終ラインで相手の攻撃を跳ね返すことはできても、前線にボールが収まらない。結果的に全体が押し上がった状態での人数をかけた攻撃に結びつかず、また守りに戻されることの繰り返しだった。
「ドイツが相手で気持ちが入りすぎていた」エース永里を下げる決断。
0-0で迎えた後半立ち上がりから、不動のエースと思われていた永里優季を佐々木則夫監督は外した。グループリーグでの選手交代は、決して早くはなかったがこの日は先手を打った。
「攻撃に思いが行き過ぎるし、彼女がプレーするドイツが相手ということで気持ちが入りすぎていた。攻守の切り替えの部分でのまずさもこれまで指摘してきていたので、チーム内では特に驚くべきことではなかった」
と説明するこの交代が功を奏した。
交代出場の丸山桂里奈の、前線からかける惜しみないプレスはチームに活気を与えた。