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まずはFC東京の正GKを奪還せよ!
U-22の守護神・権田修一の試練。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2011/07/09 08:00

まずはFC東京の正GKを奪還せよ!U-22の守護神・権田修一の試練。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

日本クラブユース選手権(U-15)で2003年に日本一となり、その後は各年代の日本代表にも選ばれ続けるなどエリート街道を歩んできた権田修一。2007年からは高校に通いながらFC東京のトップチームに昇格。大器としてチームからも将来を期待されている

 U-22日本代表の守護神、権田修一が今、試練に立ち向かっている。

 クウェートを振り切ってロンドン五輪アジア2次予選を突破。その後にFC東京に戻ったが、権田の代わりにゴールを守ってきた塩田仁史から先発の座を奪い返すことができないでいる。7月2日の鳥取戦(ホーム)もベンチスタートとなり、合流して以降2試合連続で先発から外された形となった。

 2008年に20歳でJ1デビューを果たし、その年にマークした16試合無失点はJ1最多タイ記録となった。以降、FC東京のゴールマウスを守り続け、今季もいい状態をキープしていただけに、試合に出られない悔しさはあって当然。しかし、自身がどんな状況に置かれようが権田という男はチームを優先して行動できる。そのことは鳥取戦を見てもよく分かった。デビュー2年目の高橋秀人が2点目を挙げると、権田はわざわざベンチの前で迎えてヒーローと抱き合った。副キャプテンとしてチームを盛り立てようとする姿勢が垣間見えたワンシーンであった。

「チームみんなで戦うんだという姿勢はアジアカップで学べたこと。ああやってね、ベンチのところに来てくれて喜びを分かちあうというのは、とてもいいことだと思う」

 試合後、権田はそう言うと、笑みをつくった。

アジアカップ第3GKとしての1カ月で、積極的な守備に磨きをかけた。

 今季の権田のプレーは非常に安定している。

 J2に舞台を移したとはいえミスらしいミスもなく、積極的に出ていく守備を見せつつも落ち着いた対処が目立つ。権田の大きな武器であるフィード能力にも磨きが掛かっている印象だ。

 アジアカップに招集されて、1カ月間にわたって日本代表としてトレーニングを積むことができたのも権田にとっては大きな経験となったようだ。イタリア人GKコーチ、マウリツィオ・グイードによる付きっ切りの指導のなかで、いくつか権田の心に響いた言葉があった。

 そのひとつが「もっと相手の時間を奪ってやれ」──。

 相手がシュートに持ち込む前に、積極的に出ていってチャンスをつぶすという発想。元来、アグレッシブな守備を信条とする権田ではあるが、イタリア人コーチからしてみればまだまだ手ぬるいということだったのかもしれない。グイードのもとで、より積極的なディフェンス術を学んで帰国した。

「チーム(FC東京)もGKコーチが山岸(範之)さんに今年から代わったし、グイードコーチには1カ月ずっと見てもらったり……。ホント、いろんな方の考え方を吸収できているんで自分の幅が広がっていくような、そんな感じがしているんです」

 貪欲に学び、吸収しようとする姿勢。これが権田という大器をアップグレードさせている。今は試合に出られなくとも、彼の高いモチベーションが急降下することはない。そう確信できた。

【次ページ】 五輪最終予選という「修羅場」が権田を飛躍させる!

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