北京をつかめBACK NUMBER
「中国」の壁を突き破り、卓球界悲願のメダルを!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
posted2008/05/27 00:00
いかに「中国」を倒すか。北京五輪でメダルを狙う日本卓球代表、とくに女子団体にとっての至上命題である。
卓球は北京五輪から団体戦が新設された。日本は団体戦では世界選手権で女子が4大会連続、男子も今年の大会で銅メダルと世界上位に位置してきた。当然、北京でもメダル獲得を目標に掲げるが、メダルが期待される女子団体にとって大きな壁となりそうなのが「中国」である。
それは中国代表だけを意味するのではない。実は卓球は、帰化した中国出身の選手たちが世界各国の代表に名を連ねているのだ。実力のほどは5月1日現在の世界ランキングを見ても分かる。男子は20位のうち9名が中国あるいは中国出身選手。女子の場合は中国、シンガポール、香港、オランダ、ドイツ、オーストリア……20位のうち18名を占めるのだ。それ以外でランクインしているのは10位のキム・ギョンア(韓国)と13位の福原愛のみである。
なぜこのような状況が生まれたのか。なによりも中国の実力が図抜けており、選手層の厚さも他国を圧していることにある。「世界で勝つより国内で勝つ方がはるかに難しい」といわれるほどなのだ。
そして中国の代表選抜方法も影響している。シニアになる前の早い段階で代表選手を選抜してしまうため、レールから外れた選手はのちのち代表に復帰するチャンスを失う。そのため他国に渡り活路を求めるのである。
このような現状を憂う声がないわけではない。とくに欧州卓球界では「世界レベルの大会は中国人同士の争い。卓球の人気が衰退する」と懸念する意見が多いようだ。それを受けて世界卓球連盟も、帰化選手の代表入りに一定の規制を設ける方向でルール作りを進めている。どこまで規制するのかは難しいところではあるが……。
それはともかく、北京五輪では、必然的に団体戦のライバルも中国出身選手たちとなる。現在、団体の世界ランキングは中国、シンガポール、香港が3強だがシンガポール、香港の代表はすべて元中国の選手である。
また、日本とほぼ互角の実力をもつ韓国女子団体の代表にも、昨年10月に中国から帰化したタン・イェソが加わる。タンは中国ユース元代表。3月の北京五輪アジア予選と先週行なわれた荻村杯で、中国のスターである元世界チャンピオン王楠に連勝し実力の片鱗を見せつけた。韓国も、より手強い存在になったといえる。実際、荻村杯の団体準々決勝で日本は韓国に敗れた。
日本女子は世界選手権で4大会連続銅メダルの実績があるとはいえ、世界選手権と五輪では大会方式が異なることも安閑とはしていられない材料だ。世界選手権は3位決定戦を行なわずに準決勝進出で銅メダル獲得が決まっていたが、五輪では3位決定戦が実施される。つまりは必ず3強の一角を崩さなければならないのである。
決して容易なことではない。だが大きな壁を乗り越えたとき、日本卓球界にとって初の五輪メダルがもたらされることになる。