プロ野球亭日乗BACK NUMBER
達川光男も思わず嘆息。
高橋由伸の豪華すぎるライバル達。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/02/12 10:30
高橋のライバル一番手である谷佳知は昨季101試合出場で打率.331、日本シリーズでも活躍するなど勝負強さも光った
「これは大変な競争になるじゃろねえ」
巨人がキャンプを張るサンマリンスタジアム宮崎。三塁側のベンチ前でこう言いだしたのは、広島OBの達川光男さん(現評論家)だった。
視線の先では二人のベテラン選手がフリー打撃を行っていた。
谷佳知と高橋由伸の両外野手だった。
今年の巨人外野陣は質量ともに充実した選手が集まり、激しいサバイバル戦を繰り広げている。
昨年のMVPアレックス・ラミレスに新人王の松本哲也、WBCの日本代表からブレークして5番に定着した亀井義行もいる。そこにこのベテラン2人と足のスペシャリストでもある鈴木尚広、ドラフト1位ルーキーの長野久義が加わったメンバーは、達川さんいわく「誰でも他の球団にいったら立派なレギュラーばかり」という陣容だ。
そんな7人で5つか6つの外野手のベンチ入り枠を争うわけだから、それは「大変な競争」になることは目に見えている。
「僕はゼロというかマイナスからのスタート。これまでの実績とかそういうものはまったく関係ない。むしろそういう意味では、一番後ろからのスタートになるかもしれません」
こう語るのは高橋だった。
「一進一退しながら、今はかなり違和感も消えてきている」
昨年9月に腰の手術を受けて再起をかけるシーズン。かつて長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)をして「ウルフ」と言わしめた天才打者は、いまこのサバイバル戦の中でようやく同じ土俵に上がれることを証明している。
「それなりに順調にきています。ただ、一歩ずつ前に進んでいくと、すべてが自分にとっては未知の領域。実戦に入ってどれだけの動きができるかですね」
心配された術後の経過はすこぶるいい。
「お医者さんからは“すぐに歩けるようになりますよ”って言われたけど 最初はちょっと痛みがあったりで“あれっ?”て感じだった。でも、1カ月ぐらいして痛みが取れてからは、一進一退しながら、今はかなり違和感も消えてきている」
キャンプ初日から主力組に入って、他の選手と同じメニューをなんなくこなせるまでになっている。フリー打撃を見る限り、以前の高橋に近い鋭いスイングが戻ってきている。ただ、練習は練習。試合で体にかかる負担は想像以上に違うのだという。
「複合的な動き、例えば打ってすぐに走ったり、無理な体勢でボールを捕ってすぐに投げたり。そういう連続的な動きがどれだけできるか? 試合ではとっさにそういうことができなければ、チームに迷惑をかけることになる。それがカギだと思っています」
高橋は自分の生き残りをこう分析する。