プレミアリーグの時間BACK NUMBER
さようなら、スコールズ。
マンU、1999年の三冠組は今?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2011/06/09 10:30
クラブ史上19回のうち10回のプレミア優勝に貢献したスコールズ。168cm、70kgと小柄な体で、喘息を患っていたがその運動量、ゲームへの影響力は衰えるところを知らなかった
ポール・スコールズの名前を聞いて、真っ先に思い浮かぶ言葉は2つ。
1つは「シャイ(内気)」だ。
去る5月31日、ユース時代から22年間にも及んだ、マンチェスターU一筋の現役生活に終止符を打った36歳は、スポットライトを徹底して避けたスーパースターだった。
メディア対応は大の苦手で、ヒーローインタビューの場にさえ滅多に姿を現さなかった。私生活の話題は、ほぼ皆無。強いて挙げれば、自身が少年時代にファンだったオールダム(現3部)の試合を、子連れで観戦する姿が目撃されたぐらい。反面、ピッチ上では、自らのプレーで雄弁に語った。現役時代に「天才」の名をほしいままにしたジネディーヌ・ジダンが、「同世代では間違いなく世界最高のMFだ」とスコールズを評した発言は有名だ。
今回の引退発表も、静かなものだった。
マンUがCL決勝でバルセロナに敗れた3日後に出されたコメントは、「辛い決断だったが引退の潮時だと判断した」と理由を説明する他は、チーム関係者やサポーターへの感謝の言葉で簡潔に締め括られていた。指導者転向に関しても、本人の口からではなく「名選手を失うことになってしまったが、コーチ就任は頼もしい限りだ」というアレックス・ファーガソン監督の発言で明らかになった。10度のプレミアリーグ優勝をはじめ、合計20タイトルを獲得したマンUでの栄光のキャリアを終える節目の時でも、寡黙な男は多くを語ろうとはしなかった。
選手としての凄さを示したニックネーム「ジンジャー・○○○○」。
そして、もう1つの言葉は「ジンジャー(赤毛)」である。
英国では、何故か赤毛の人物が茶化される傾向にある。立場や身分にかかわらず、赤毛というだけでからかわれてしまう。スポーツ選手であるスコールズも例外ではなかった。
但し、違いが1つ。
通常は垢抜けない印象を伴う「ジンジャー・○○○○」という表現が、スコールズの場合には、逆に格好良く思われた。その後に続く、選手としての凄さを示す言葉とのギャップが激しく、フレーズとしてのインパクトが強烈だったのだ。