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<NBA史上最多優勝のヘッドコーチ> フィル・ジャクソン 「去り際の美学」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byNBAE/Getty Images
posted2011/06/07 06:00
最後の試合となった西カンファレンス準決勝。敗退するも、穏やかな笑顔でコートを去った
ブルズ、レイカーズで黄金時代を築き上げた稀代の名将が、
20シーズンにも及んだ栄光のコーチ生活にピリオドを打った。
最後の戦いを終えて見せた、笑顔に込められた想いとは――。
20シーズンにも及んだ栄光のコーチ生活にピリオドを打った。
最後の戦いを終えて見せた、笑顔に込められた想いとは――。
ことによると、フィル・ジャクソンはシーズンが始まる前からこの結末を予感していたのかもしれない。
去年7月、2010-'11シーズンもロサンゼルス・レイカーズのヘッドコーチとして戻ってくると表明したとき、ジャクソンはプレスリリースの文中で「これが私にとって“ラストスタンド”になる」と宣言した。その後、シーズン前の会見でも、シカゴ・ブルズでの'97-'98シーズンを“ラストダンス”と名づけたように、このレイカーズのシーズンに名前をつけるとしたら何になるかと聞かれ、「7月のプレスリリースにも書いたように、これは“ラストスタンド”だ」と繰り返した。そう言った後で、ジャクソンは「カスターのような結末にならないように願っているけれどね」と付け加え、笑いを誘った。
モンタナ州で生まれ育ったジャクソンにとって、19世紀に地元で起こった歴史的なリトルビッグホーンの戦い、通称“ラストスタンド”は子供の頃からよく聞く、馴染みある話だった。カスター中佐率いるアメリカ陸軍第7騎兵隊260名が、アメリカン・インディアンに対して無謀ともいえる奇襲をかけるのだが、複数の部族が団結して数千人の兵士を揃えていたインディアン連合軍に包囲され、あっけなく全滅したという実話だ。カスター中佐も、この戦いで戦死している。