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大阪桐蔭・西谷監督の炯眼恐るべし。
中田翔と浅村栄斗、覚醒の理由。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNaoya Sanuki

posted2011/06/01 12:05

大阪桐蔭・西谷監督の炯眼恐るべし。中田翔と浅村栄斗、覚醒の理由。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

2007年のドラフトで佐藤由規(仙台育英高→ヤクルト)、唐川侑己(成田高→ロッテ)と並んで「高校ビッグ3」と呼ばれた中田。尊敬する清原和博に追いつくような選手になれるか?

斎藤佑樹の球は絶対に打てないと分かっていた。

 だがそんな矢先、練習試合中に右ヒジのじん帯を損傷してしまう。さほど大きな故障ではなかったが、完治するまでにほぼ1年を要した。

 復帰後、球速はすぐに147~8キロまで戻った。ただし、2年春の一時期に見せたようなキレは完全に失われていた。

「本人も投げながら、首をひねっていましたからね。違うな、って」

 ヒジを傷めてからというもの、打撃練習に割く時間は増えていったが、西谷の中では、中田は依然として投手のままだった。

「ピッチングに関してはすごい熱心に質問してきたんですよ。ヒジの高さとか、スライダーの投げ方とか。その吸収力も抜群でしたから。でもバッティングのことは何も聞いてこない。興味がなかったんでしょうね。打順が回ってきたら、ガンって打つ。で、当たったらホームラン、みたいな感じだった。だからテクニックでこられると、お手上げだった。2年夏の甲子園で早実の斎藤(佑樹)君にやられたときもそうですよね(3三振)。絶対、打てないと思いましたから」

打者としての能力はまだまだこんなものではない!

 ピッチングに関する引き出しは、いくらでもあった。その一方で、バッティングとなると引き出しは無いも同然だった。

 それでも取材に訪れた当時、プロの水に慣れつつあった中田はファームでホームランを打ちまくっていた。

「よくここまできましたよ。正直、もっと時間がかかると思った。2年目の時点で比べたら、中村よりも中田の方が数段上でしょう。でも、まだまだこっからですよ。彼はウサギですから。やったらこんなもんじゃない」

 遅ればせながら、その中田も今季、4年目にして初めて4番を任されるなど、一軍でも少しずつ認められつつある。だが西谷が話していたように、中田が投手として見せた可能性からすれば、打者としての能力もまだまだこんなものではないのだろう。

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