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諸見里しのぶ 「大切なものを持って帰りたい」 / ゴルフ全英女子オープンへの決意 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKiyoaki Sasahara

posted2009/07/27 11:31

諸見里しのぶ 「大切なものを持って帰りたい」 / ゴルフ全英女子オープンへの決意<Number Web> photograph by Kiyoaki Sasahara

まずは予選を確実に突破することを目標としたい。

 諸見里にとってアメリカ女子プロゴルフツアーのメジャートーナメントに挑戦するのは、'06年の全米女子プロについで2度目のこと。しかし当時とは比べ物にならないほどの実力、風格を兼ね備えての挑戦になる。しかし目標は堅実だ。

「まずは着実に予選を通過すること。それが最初の目標です。もし、予選通過できたならトップ10を狙っていきたいですね。最終的にはトーナメントが終わって、なにかひとつでも自分で『うまくなったな』と思えるものを持って帰りたいって思います」

 気負いはなく、さらりとしたターゲット設定だ。「ひとつひとつのホールにクリアすべき課題がある」と話す諸見里らしい発想ではないか。

 この2年間、諸見里は日本を舞台にしてきたが、今回の全英女子オープンへの出場によって、再び海外へ挑戦したいという意欲が刺激されるかもしれない。

「3年前、アメリカに行けたのは若さゆえの『やる気』と『勢い』があったからだと思います。いまだったらとてもひとりじゃ行けないですよ、大変だってことを知ってますから。'06年の時は日本とアメリカを掛け持ちしながらやっていこうと考えていたこと自体が甘くて、アメリカでは移動も大変だったし、自分自身、納得がいきませんでした。でも、アメリカに挑戦したことを後悔したくはない。将来、自分が大きな活躍をして、『ああ、あの時にアメリカに行ったことがプラスになったんだ』って思えるようにしたい。要はこれからの自分次第ですね。

 将来的にはもう一度、アメリカツアーに挑戦したい気持ちは強いです。勝ったときの賞金が大きいのはプロとしては魅力的だし、トリッキーなコース設定に挑戦していくのはゴルフの醍醐味。それに世界中から強い選手が集まってきて、そのなかでゴルフが出来るのは本当に楽しい。私のゴルフの最終的な目標は、全米女子オープンで優勝することですから」

全米女子オープン制覇とアニカ・ソレンスタムまでの道程。

 大きな目標だ。そんな夢を持てるようになったのも、高校生のときからナショナルチームのメンバーとして、海外のトップゴルファーと接する機会があったからだ。諸見里がアメリカにこだわるのは、「憧れの存在」がアメリカにいたからだ。

「アニカ・ソレンスタム。高校1年のとき、間近でプレーするのを見て、『女子でもこういうゴルフが出来るんだ』って衝撃を受けました。そのときで、ドライバーで飛距離が30から40ヤード違ってたし、セカンドを打つにも2クラブか3クラブ違ってました。それに一本のクラブで多彩なショットが打てる。少しでもアニカに近づきたい、そう思いました」

 日本に帰ってから、師匠である江連忠にソレンスタムへの憧れを話すと、

「アニカまでは400段、差があるぞ」

 と言われた。いかにも、自分が指導する選手たちに明るくプレッシャーをかける江連らしい言葉だ。諸見里は師の言葉を真剣に受け止めた。

「アニカのプレーを見てから7年が経ちました。いまの自分はアニカまで200段を切ったかなと思っています。今年は精神面、技術面でも充実しているので、あと150段くらいまで来てはいるんじゃないかと」

「すべてがいい循環で回っている」諸見里は全英で急成長できるか?

 そう実感するほど、今年の諸見里は心身共に充実しているのだ。

「プロになってから、こんなに楽しいことが増えてるのは初めてです。すべてがいい循環で回っているんですけど、それも発想を変えたからかな、と思って。周りの人に不平や不満を言わないことって、大事なんですね。いままで気づかなかったけど、『面倒くさいなあ』とかけっこう口にしてたんです。でも、意識して愚痴るのをやめたらラッキーなことも増えてきて、びっくりするようなパットも入るようになったんですよ。たぶん、ネガティブな発想をする人には、幸運は訪れないのかなと。だから全英女子では、何事も前向きに考えようと思ってるし、早く現地に行きたい、プレーしたいって思ってます」

 大会に向けて、諸見里は7月25日に現地入りする予定だ。マンチェスターから車で1時間ほど走ったところに、ロイヤルリザム&セントアンズは待ち受ける。

 アニカへの階段は、あと150段ほど。もし、諸見里しのぶが全英女子オープンで上位を争うことにでもなれば―― 一気に階段を駆け上がることになり、残るステップは100段を切るかもしれない。

諸見里しのぶ

1986年7月16日、沖縄県生まれ。9歳でゴルフを始め、おかやま山陽高に進学。'05年8月、プロ転向。'07年日本女子オープン優勝。今季は5月にワールドレディスを制し(国内メジャータイトル2勝目)、賞金女王争いで僅差の2位に付ける。160cm

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