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鈴木隆行 男の器。
text by
高川武将Takeyuki Takagawa
posted2006/11/23 22:46
── 一生が、ということ?
「自分の求めるものがどこでストップするかわからないけど……。自分に対して、何ていうか、こんな自分じゃダメだっていう、劣等感……じゃないな、トラウマ……絶望感……とも違うな、でもそんな感じで自分を捉えてる。自分が凄く小さい人間に思えるし、もっと大きくしたい。器を広げたい? そう、デカイ男になりたい!― 金を稼ぐなら日本でもできる。でも俺ね、全て見たいと思ってる!― 世界にあるものを、ひと目でいいから。その欲望はもの凄く強いね。あっという間に死を迎えるわけでしょう、人間て」
──だから今を一生懸命に、となる。
「でもね、俺、オッサンになってまで、こんなこと考えて生きていたくないの(笑)。楽して適当に生きたい!― だから今、思い切り詰め込みたいんです」
鈴木には微塵の暗さもなかった。置かれた状況とは裏腹の、にじみ出る溌剌さは、一体、どうしたことだろう。
今季に入って、海外のクラブから、非公式ながら移籍の打診もあったが、鈴木はそれを拒否していた。
「サッカーのことだけを考えたら、環境を変えればいいのかも知れないけど、俺はサッカーで成功したいという思いと共に、人間的に成長したいと強く思ってるから、簡単に変えることは凄く引っかかる。俺は嫌なのね……もう、知っちゃってるから」
──知っちゃってるって、何を?
「困難を乗り越えて生きることで、どんだけ人間的に強くなるかということを」
(以下、Number666号へ)