MLB東奔西走BACK NUMBER
名門ドジャースが突如経営危機に!!
発端はオーナー夫妻の離婚騒動?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2011/05/03 08:00
ドジャース、現オーナーのフランク・マッコート氏。不動産王として名を馳せたが、離婚訴訟で巨額の負債を抱えていることが判明した
4月20日のことだ。バド・セリグ=MLBコミッショナーは、近日中に監視役を任命し、ロサンゼルス・ドジャースをMLB機構の監視下に置くと発表した。
すでに日本でも報じられているように、球団経営を監視するのみならず選手補強を含め今後すべての決定はMLBの承認を得なければならなくなり、実質フランク・マッコート=ドジャース・オーナーから経営権を剥奪したにも等しい措置である。
これまでもMLBは、オーナー不在だった2004年のモントリオール・エキスポスを管理下に置いたり、昨年球団売却を決定したレンジャーズに監視役を派遣したりしているが、あくまで新オーナーが見つかるまでの緊急措置であった。レンジャーズの時でも経営権は前オーナーに残していた程度だった。
だが今回は、球団売却を望んでいないオーナーに対する策であるだけに、異常事態であることは明々白々だ。
泥沼化しているオーナー夫妻の離婚問題。
その発端が……オーナー夫人であり共同オーナーとして球団経営陣のトップの1人にも名を連ねるジェイミー・マッコート女史との離婚問題だというのだ。
両者の離婚問題は、2年が経過したという今でも法廷で争われている。
離婚のみならず、単独オーナーとして完全経営権の取得を目指すフランク氏に対し、ジェイミー女史はカリフォルニア州法を盾に共同オーナーとして50%のチーム保有権を主張。さらにはフランク氏からの完全買収までをも狙おうとしているというのだ。
両者の骨肉の争いは、先の見えない泥沼化の様相を呈している。
昨年その去就問題が注目されていたジョー・トーリ前監督について番記者の1人に話を聞いた際、「彼(トーリ氏)は経営陣に完全に嫌気がさしている。このチームに残ることはないし、来年他のチームで監督をやっていても自分は驚かないだろう」と語っていた。
それほどまでに、オーナー夫婦のゴタゴタ騒ぎはチーム内に悪影響を及ぼしていたようだ(結局、トーリ氏は野球運営担当取締役副社長としてMLB機構入りし今回の決定に関わっているばかりか、今年4月にはドジャースのアシスタントGMだったキム・イング女史を自らのスタッフとして採用している)。
問題の根底にある、オーナーとしての資質。
だがMLBが今回のような異例の決定を下した原因は、単に離婚問題だけではなさそうだ。
本当は、フランク・マッコート氏にオーナーとしての資質があるかどうかを、これを機に見極めようとしているのではないかと思われる。
元々ボストンを拠点に不動産業を営んでいたマッコート氏は、当初はボストン・レッドソックスの買収を目指していたが失敗に終わり、その後もアナハイム・エンゼルスやタンパベイ・バッカニアーズ(NFL)の買収なども試みた末、2004年にようやくルパート・マードック氏率いるニューズ・コーポレーションからのドジャース買収に成功することになる。
しかしこの時点で買収額4億3000万ドルのうち1億4500万ドルを、ドジャースのTV中継を担当するFOX社(これもニューズ・コーポレーションの傘下企業)から借り入れなければならない状況だったのだ。