プレミアリーグの時間BACK NUMBER
早ければ今夏にもプレミアに復帰!?
モウリーニョの条件は「全権掌握」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byMarcaMedia/AFLO
posted2011/04/01 10:30
今季、リーガで優勝できなくてもプレミア復帰はあるのか? インテル時代は英、伊、スペインの3大リーグを制し、CLを異なったチームで3度制す初めての監督になると語ったこともあったが……
長期政権のアーセナルも今季の優勝を逃すと……。
アーセン・ベンゲルが指揮を取り続けているアーセナルは、追う立場ながらも可能性が残る今季のリーグ優勝を逃せば、6シーズン連続の無冠ということになる。タイトルに飢えているファンの間で、ベンゲルがこだわる「勝ち方」よりも、モウリーニョが優先する「勝利」への要求が高まらないとも限らない。
リバプールでは、チェルシー時代にモウリーニョに片腕として信頼されたスティーブ・クラークがコーチを務めている。
破格の資金力を持ち、2年連続でCL出場権(4位以内)争いに絡んでいるマンチェスターCは、モウリーニョ就任当初のチェルシーを思わせる。
昨季4位のトッテナムには、マンCを凌ぐ選手層と、モウリーニョ好みの速攻を可能にする戦力が既に揃っている。
モウリーニョの望みはクラブにおける「全権掌握」だ。
問題は、各クラブがモウリーニョの真の望みを叶えられるどうかだ。
野心旺盛な策士がセンチメンタルな感情だけで動くはずがない。'04年にポルトからチェルシーに移ってステップアップを果たしたモウリーニョは、1度目のイングランド、続くイタリア、そして現在のスペインでも得られていないものを2度目のイングランドに求めていると見られている。それはクラブにおける「全権掌握」だ。
モウリーニョは、チェルシーでは国内のタイトルを総なめにし、インテルではCLを含む三冠を達成し、1年目のレアルでも国内外で優勝の可能性を残している。しかし、チームの指揮官として最大級の賛辞を浴びても、クラブにおいてはナンバー2以下の存在であり続けた。チェルシーはアブラモビッチのもの。インテルにはモラッティ一族が君臨している。レアルではGMにすぎないホルヘ・バルダーノからも横槍が入る状態だ。
モウリーニョは、相思相愛で舞い戻るイングランドで、補強の人選やサッカーのスタイルを含め、フットボールクラブのグランドデザインを描ける立場を欲しているのではないだろうか?
そう考えれば、チェルシー復帰の線は消える。
アブラモビッチが自分の権限を一部でも譲るはずはなく、そもそも、筆者を含むチェルシー・ファンの中には、クラブ史上最高の指揮官の復帰を夢見る一方で、再び監督とオーナーのエゴが衝突し、ただでさえ世代交代が必要なチームが悲惨な末路を辿るという悪夢を怖れている者が少なくない。アーセナルとリバプールは、オーナーが一歩引いたとしても、大物買いの傾向が強いモウリーニョを満足させる財力を持たない。