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「ここで打ったらえらいことだな」延長10回の劇的決勝タイムリー…それでもイチローが第2回WBCで「大きな流れに勝てなかった」と語る理由《インタビュー/2009年》

2025/03/16
WBC直後にアリゾナでインタビューに応じたイチロー
連覇を期待されて挑んだ第2回WBCで、主役は深刻な打撃不振に陥った。それらもすべて、決勝戦のあの一打のためのプロローグだったのだろうか。劇的な優勝から2日後、極限で迎えた打席での心境を明かした。(初出:Number726号 イチロー「みんなが折れかけた心を支えてくれた」 NumberPLUS「イチローのすべて」にも掲載)

 ごちそうさま、ではなかった。

「あれは『ち』ではありません。小さい『っ』です。こういう形で終わって、そこは大事なところだからね。『ごちそうさまでした』ではなく、『ごっそうさまでした』。そのほうが、雰囲気いいでしょ(笑)」

 何もかもが、3年前と同じだった。

 WBC決勝の翌々日、アリゾナにあるイチローの自宅で彼の話に耳を傾ける。激闘の興奮をどこに探したらいいのかというほど、静かな空間に、ラフな姿のイチローがいた。奪いにいくと言い切った2度目のWBCでその言葉通り、連覇を果たし、しかも決勝戦では試合を決める値千金の一打を放った。満足感もあるだろう。ただ、そこに敢えて違いを探すとすれば、イチローが口にした「こういう形」というフレーズに、ネガティブな匂いを感じてしまうことだろうか。

「だって、最後だけだからね。ホントに最後だけ、僕がいただいちゃったんですから」

 最後だけ──。

 WBCの決勝は、韓国との5度目の対決となった。先制して追いつかれ、突き放しては追い上げられ、3-2と日本が1点をリードして迎えた9回裏。日本のマウンドには抑えに抜擢されたダルビッシュ有が上がる。しかし、そのダルビッシュがレフト前へタイムリーを許してしまい、これで3-3の同点。さらにツーアウト一、二塁と一打サヨナラのピンチが続く。それでもこの場面は、ダルビッシュが後続を三振に斬って取り、日韓五番勝負の最終ラウンドは延長戦に突入することになった。ゲームは終わらなかったのだ。そして、ここまでの苦しみ続けた43打席では、イチローのWBCも終わらなかったのである。もし日本が1点のリードを守ったまま、9回で試合が終わっていたら、WBCの連覇は違った形で現実になっていた。その場合の連覇は、イチローにはどう映っていたのだろう。

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photograph by Naoya Sanuki

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