#751

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「野球のために命を削る覚悟がある」王貞治が包み込んだ“背番号51”の葛藤と「5度のバント」…イチローが感じた「王監督の白さ」とは何か?《Wインタビュー/2010年》

2025/03/17
それぞれインタビューに応じた王貞治とイチロー
稀代のヒットメーカーと世界のホームラン王は、共に日の丸をつけて戦った。記録と、そして恐怖と向き合ってきた、価値観を共有できる数少ない“同志”だ。二人にしかわからない境地について、クロスインタビューで明かした。(初出:Number751号 イチロー×王貞治「超えたものだけ見える道」 NumberPLUS「イチローのすべて」にも掲載)

 突然、喧噪から切り離されて、王貞治とイチローは二人っきりになった。

 日の丸が、ごく限られた空間を作り出す。

 歓喜の渦から日の丸が二人を覆い隠してくれたおかげで、イチローは、王の言葉を耳元でハッキリと聞くことができた。

「ありがとう、君のおかげだ」

 2006年3月20日。第1回WBCの決勝戦が終わった直後のことだった。世界一を勝ち取って日の丸を手にしたままのイチローが、王のもとへ歩み寄った。その瞬間、風が舞い、日の丸がふわっと二人を包み込んだ。王とイチローは、二人っきりの空間を分かち合うことを許されたのだ。ほんの5秒間の奇跡を、王はこう振り返る。

「あれこそ自然なんですよ。自然に両者の思いが表れたんです。ずっと一緒にやってきて、最後の最後で自然にね、ああいうことができた。彼はスタートからあの場面まで、チームを引っ張ってくれました。同じユニフォームを着ていても、監督というのは、選手の中に入り込めない部分があるんです。でも、彼が選手たちの先頭に立って、引っ張ってくれた。だから、ホントにありがとうという素直な気持ちがね、自然に出たんだと思います」

第1回WBC決勝戦が終わったグラウンドで、監督と選手として戦った二人が日の丸を手に安堵の表情を浮かべた Naoya Sanuki
第1回WBC決勝戦が終わったグラウンドで、監督と選手として戦った二人が日の丸を手に安堵の表情を浮かべた Naoya Sanuki

 一方、王の感謝の言葉を耳にしたイチローは、すべてが報われた気がしたのだと言った。

「あれは……運命のイタズラでしょうね。だって王監督とあんなふうに日の丸に包まれるなんて絵は、できすぎです。監督は別格なんです。選手としてのすごさだけではなく、圧倒的な人間性が加味されることによって、王監督という存在は誰よりも特別になるんです。あのときはそこにたまたま僕がいたけど、本来、見合うわけがないんです」

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photograph by Naoya Sanuki / Shigeyoshi Ohi

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